教員リレーエッセイ:キャリー、アナ雪、暗殺教室
こども心理学科の教員リレーエッセイを再開しました。2016年6月25日オープンキャンパスでのこども心理学科藤掛明先生の模擬講義をエッセイにまとめました。
キャリー、アナ雪、暗殺教室
アメリカのホラー映画の名作に「キャリー」(1976年)がある。
女子高校生のヒロインが、いじめにあい、最後の場面で、そのいじめに耐えかねて、 秘めた超能力が暴走し、学校や自宅を破壊してしまうという物語だ。
内なる怒りや攻撃性の感情をいかにおさえ、いかに出すか、というテーマを比喩的に扱っていると、私はとらえている。
その「キャリー」が、2013年、アメリカでリメイクされた。世界が、怒りや攻撃性の出し方について、考えることを突きつけられているかのようだ。
さらにときを同じくして、「アナと雪の女王」(2013、アメリカ)も封切られた。
アニメの中のヒロインは、「キャリー」と違って、炎を呼ばない。むしろ凍らせてしまう。その表現は対照的だが、怒りと攻撃性の表現は共通している。まさに「ありのままの」自分を、周囲を凍らせることなく、また破壊することなく、しかし我慢するのでなく、いかに表現すべきかを問うた作品である。
そうこうしているうちに、日本でも「暗殺教室」(2015年)、「同・卒業編」(2016年)が大ヒットした。これも一種の破壊物だ。担任教師が、クラスの生徒たちに、自分(教師)を暗殺するよう指導する。ところが一ひねりも二ひねりもあって、無気力な生徒たちが成長していく。暗殺というのは比喩的に考えれば、怒りや攻撃性の発露を示している。Hey! Say! JUMPの歌う主題歌の詩も案外と深い。
人間関係の難しさ、社会の悪と閉塞感。
こうしたことがますますやっかいになっている現状では、当分は、周囲を一瞬のうちに燃やし、凍らせ、壊すような、破壊物の映画作品がいくつも登場してくるにちがいない。
( こども心理学科准教授 藤掛明 )

そのほか、埼玉新聞掲載「経世済民」でも、こども心理学科教員の記事が読めます
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