学科プログラム:フィンランド福祉研修2017

人間福祉学科の2017年度北欧研修プログラム、「フィンランド福祉研修」についてレポートします。

【その6:最終レポート】フィンランドの教育

3月9日(金)午前は、カウニアウネン市(ヘルシンキ市から北西へ車で約30分)にある「マントゥマキ小学校」を訪問しました。土地柄として、フィンランド国内で経済的にやや豊かな人々が住んでいる地域です。

フィンランドの教育は、おおまかにいうと「就学前教育(6歳)」→「基礎教育(7歳~16歳)」→「一般(普通)高等学校」または「職業教育・実習」(※どちらも3年間)→「大学」または「高等技術専門学校」→...と進んでいきます。フィンランドでも基礎教育の9年間が「義務教育」にあたります。このうち小学校では、1年生(7歳)~6年生(13歳)までの子どもたちが学んでいます。

小学校の校長先生です。この小学校では、校長先生でも授業を担当しています。生徒からは「校長先生」ではなく親しみを込めて名前で呼ばれています。
小学校の校長先生です。この小学校では、校長先生でも授業を担当しています。生徒からは「校長先生」ではなく親しみを込めて名前で呼ばれています。
5年生の教室です。この教室のイメージは「宇宙」です。壁紙から椅子・机・床のデザインまで、子どもたちが話し合って決めます。試しに座ってみた円形の椅子は、とても不安定で“ゆらゆら”しました。
5年生の教室です。この教室のイメージは「宇宙」です。壁紙から椅子・机・床のデザインまで、子どもたちが話し合って決めます。試しに座ってみた円形の椅子は、とても不安定で“ゆらゆら”しました。
子どもたちの学習スタイルは様々です。写真は、先生から出された課題をノートPCで調べている様子です。机に向かって座る以外にも、勉強する姿勢があるんですね!
子どもたちの学習スタイルは様々です。写真は、先生から出された課題をノートPCで調べている様子です。机に向かって座る以外にも、勉強する姿勢があるんですね!
休み時間は雪が積もった校庭で元気に遊びます!「スーパーバイザー」と呼ばれる教員が子どもたちの遊びを見守っています。
休み時間は雪が積もった校庭で元気に遊びます!「スーパーバイザー」と呼ばれる教員が子どもたちの遊びを見守っています。
小学校の給食もビュッフェ形式です。生野菜、蒸したじゃがいも、ミートボールなどが並ぶ中、今日のおススメは「魚フライ(写真中央)」とのこと。ちなみに、小学生が好きな食べ物は、「ピザ」や「ハンバーガー」だそうです。
小学校の給食もビュッフェ形式です。生野菜、蒸したじゃがいも、ミートボールなどが並ぶ中、今日のおススメは「魚フライ(写真中央)」とのこと。ちなみに、小学生が好きな食べ物は、「ピザ」や「ハンバーガー」だそうです。

【参加者の感想】
子どもを主役として育てていく教育に、子どもの可能性をとても感じることができました。また同時に、子どもの興味を引きつけるように工夫を凝らす教師の難しさも感じました。どのような国や環境であっても、教育のために子どもの興味・関心を引きつけるために工夫を凝らすのは教師の役目であり、子どもが将来どのような大人になるかというキーはそこにあるのではないかと思いました。

【引率者の感想】
校長先生のレクチャーで印象に残っているのは、「教育は子どもたちの将来を見越した"最先端"であることが必要」とか、「教員は子どもたちの主体性(自ら知りたい・学びたいと思う気持ち)を引き出す関わりが大切」という言葉です。どちらも実践するとなると難しいことかもしれませんが、個人的には心に留めておきたいメッセージでした。

【その5】フィンランドの教会編

フィンランドは、国民の大多数が、ドイツの宗教改革者マルティン・ルターの流れを継承するプロテスタント・ルター派の教会に属しています。私たちが滞在したヘルシンキ市内にも、大小さまざまな教会堂がありました。その③で取り上げたヘルシンキ・ディアコネス研究所も、ルター派立の福祉施設で、施設内に礼拝堂があったことは、ご紹介した通りです。

ディアコニッセ研究所内にある礼拝堂。
ディアコニッセ研究所内にある礼拝堂。
聖壇の様子。ひざ掛け台で聖餐を受ける他、各職務の任命式の際もこの台に跪いていたようです。
聖壇の様子。ひざ掛け台で聖餐を受ける他、各職務の任命式の際もこの台に跪いていたようです。

ヘルシンキ市内のほぼ中心に位置するテンペリアウキオ教会も、フィンランド福音ルター派の教会です。大岩をくり抜いてつくられた、世界でも珍しい建築様式で、年間50万人の観光客が訪れます。5日目に私たちも行きましたが、荘厳な空間と現代的なセンスが合わさった礼拝堂に、しばし言葉を失いました。コンサートホールにも使用されています。

テンペリアウキオ教会内。岩の層がよくわかります。
テンペリアウキオ教会内。岩の層がよくわかります。

私たちが宿泊したホテルのすぐ近くにも、教会がありました。カンピ教会です。こちらは、一見すると、本当に教会なのか目を疑うほどにユニークな建物です。ルター派立ではなく、エキュメニカル(超教派的)な目的で建造されました。ルター派の礼拝堂と違って、内部は非常にシンプルです。このような建物が、にぎやかなショッピングセンターのすぐそばに立っているのが、いかにもキリスト教国らしく感じます。

外から見たカンペ教会。舟の形をしています。
外から見たカンペ教会。舟の形をしています。
カンペ教会内部。一切の装飾を取り払ったシンプルさに祈りの心が引き立てられます。
カンペ教会内部。一切の装飾を取り払ったシンプルさに祈りの心が引き立てられます。

最後に、ヘルシンキ・カテドラルをご紹介します。3日目のお昼、施設見学の合間に訪れた教会です。一見、ロシア正教の教会に見えますが、ルター派の教会です。元老院広場という大きな広場の背後にそびえたっています。礼拝堂に入ると、ルター及びルターの宗教改革運動を後押ししたメランヒトンの銅像がでかでかと飾られていました。礼拝堂の正面には、十字架上で死なれたイエス・キリストが降ろされる場面の絵画。その絵画に、ちょうど真昼の太陽の光が横から差し込んでいました。

外から見たヘルシンキ聖堂。手前が元老院広場です。
外から見たヘルシンキ聖堂。手前が元老院広場です。
ルターの宗教改革を支えたF・メランヒトンの像。
ルターの宗教改革を支えたF・メランヒトンの像。
M・ルターの像。
M・ルターの像。
聖壇正面の絵画。陽の光が優しくキリストの遺体に注がれています。
聖壇正面の絵画。陽の光が優しくキリストの遺体に注がれています。

このように、福祉の学びと共に、フィンランド人にとって身近な教会にも触れることができました。

 

【その4】施設訪問、フィンランド人のご家庭で食事会

3月7日(水)午前は、「Krits」を訪問しました。罪を犯して刑務所に入所した人を対象に、社会復帰に向けた様々な支援プログラムを行っているNGO団体です。
前日のディアコネス研究所でも同様の説明がありましたが、Kritsでも支援プログラムの1つとして住居提供サービスを実施していました。フィンランドの冬はとても寒いので、生活基盤として住居の確保は必須です。
他には、子どもへの性犯罪を予防するプログラム(これから実施する予定)がありました。電話相談などを通して、事前に犯罪を予防することをねらいとしています。

写真の方は、罪を犯した人への支援プログラムを新たに開発する仕事をしているそうです。
写真の方は、罪を犯した人への支援プログラムを新たに開発する仕事をしているそうです。
今回の移動方法も公共交通機関です。次の目的地に向かうトラム(路面電車)を待っている様子です。
今回の移動方法も公共交通機関です。次の目的地に向かうトラム(路面電車)を待っている様子です。
今日のランチはArcade応用科学大学の学食でランチです。広々として開放的な学食でした。
今日のランチはArcade応用科学大学の学食でランチです。広々として開放的な学食でした。
フィンランドではビュッフェ形式のランチが一般的です。味も美味しかったです!
フィンランドではビュッフェ形式のランチが一般的です。味も美味しかったです!

午後は「Attendoラッシラ・サポートホーム」を訪問しました。この施設は、主に30歳以下で、軽度の精神障害(発達障害、うつ、依存症など)がある人を対象に、住居(賃貸アパート)提供と生活支援を行っています。生活支援では、このアパートを出た後に、一人で自立した生活ができるように、家事全般のトレーニングをしています。

アパートのモデルルームです。間取りは1LDKに近い感じでした。ここで料理(自炊)する人もいれば、共用の食堂で食事の提供を受けている人もいます。入居者一人一人の状況に応じてサービスが提供されています。
アパートのモデルルームです。間取りは1LDKに近い感じでした。ここで料理(自炊)する人もいれば、共用の食堂で食事の提供を受けている人もいます。入居者一人一人の状況に応じてサービスが提供されています。
アパートの中を所狭しと移動中。共用の洗濯スペース、サウナ、食堂などを見学しました。
アパートの中を所狭しと移動中。共用の洗濯スペース、サウナ、食堂などを見学しました。
共用の食堂にてリラックスタイム。お茶やジュースをいただきました。
共用の食堂にてリラックスタイム。お茶やジュースをいただきました。

本日は夜の部もありました。フィンランド人のご家庭に訪問してのお食事会です!!
どんなご家族が待っているのでしょうか...??

ホテルからバスで移動した後、細い雪道を徒歩で上って行きます。周囲は白樺の林が広がっています。
ホテルからバスで移動した後、細い雪道を徒歩で上って行きます。周囲は白樺の林が広がっています。
到着しました。写真では伝わりづらいかもしれませんが、とても大きな立派な一軒家です。
到着しました。写真では伝わりづらいかもしれませんが、とても大きな立派な一軒家です。
Linnarinneさん宅には愛犬が3匹いました。ワンちゃんを介して国際交流が進みました!
Linnarinneさん宅には愛犬が3匹いました。ワンちゃんを介して国際交流が進みました!
フィンランドで同じ年代の友達ができました!一人だけ年代が違うかも?!(笑)
フィンランドで同じ年代の友達ができました!一人だけ年代が違うかも?!(笑)

【その3】本格的な研修がスタート

今日から本格的な研修がスタートしました。
3月6日(火)午前は、「ヘルシンキディアコネス研究所」というキリスト教(ルター派)にもとづいて、ホームレス状態の方への住宅提供、福祉専門職(ソシオノミ等)の研修などを行っている団体を訪問しました。

赤レンガづくりの教会。この建物でレクチャーを受けました。
赤レンガづくりの教会。この建物でレクチャーを受けました。
レクチャーを受ける前に教会内を見学しました。
レクチャーを受ける前に教会内を見学しました。

【参加学生の感想】
レクチャーの中で言われていた「その人(例:ホームレス状態の人)のニーズを大切にして、"助ける"のではなく、"生活を立て直す"」というヨーロッパ福祉の考え方を示している場所だと思いました。

午後の研修を前に、少しだけ散策する時間が取れました。上の写真は、寒波の影響で凍ってしまった海の様子です。
午後の研修を前に、少しだけ散策する時間が取れました。上の写真は、寒波の影響で凍ってしまった海の様子です。

午後は「ヘルシンキ市イタカトゥ・ファミリーセンター」を訪問しました。この施設は、ヘルシンキで初めて設立されたワンストップ型(様々な機能・役割を1ヶ所に集約している)ファミリーセンターです。妊娠・出産・就学前までの子育て支援を一手に担っています。
日本でも子育て支援の仕組みとして取り入れられている「ネウボラ」や、その他の家族支援の取り組みについてレクチャーを受けました。

フィンランドは移民を多く受け入れている国の1つです。このセンターでも様々な言語で書かれたパンフレットが置いてありました。
フィンランドは移民を多く受け入れている国の1つです。このセンターでも様々な言語で書かれたパンフレットが置いてありました。
道路に面した窓に貼られたイラストが目を引きます。
道路に面した窓に貼られたイラストが目を引きます。
建物の入口付近に置かれた受付の機械です。 保健師や医師と面談するために訪れたママさん・パパさんは、まずこの機械で受付を済ませます。フィンランドではこの施設に限らず、様々な場面でICT技術が活用されています。
建物の入口付近に置かれた受付の機械です。 保健師や医師と面談するために訪れたママさん・パパさんは、まずこの機械で受付を済ませます。フィンランドではこの施設に限らず、様々な場面でICT技術が活用されています。
レクチャーをしてくださった職員(手前右から3人目)、通訳兼コーディネーター(手前左から2人目)の方と一緒に撮影した写真です。貴重な機会をありがとうございました。
レクチャーをしてくださった職員(手前右から3人目)、通訳兼コーディネーター(手前左から2人目)の方と一緒に撮影した写真です。貴重な機会をありがとうございました。

【参加学生の感想】
ファミリーセンターという手厚い支援を受けられる機関があるため、子育てがしやすくなり、家族との時間を幸せと感じる国民が多いのだと思いました。

【その2】いよいよ出発〜研修初日の様子

いよいよ出発の日を迎えました。
全員が元気で実りある研修になりますように。。。

出国手続きの前に1枚。これから10時間のフライトです。
出国手続きの前に1枚。これから10時間のフライトです。

フィンランド(ヘルシンキ)に到着すると、外はマイナス7℃とのこと。徐々に春めいていた日本と比べると、本当に寒いです。空港に到着して早々、「暖かい日本が恋しい!」という声もちらほら聞かれました(笑)

宿泊するホテルのロビーで、添乗員の方から宿泊する際の注意点や翌日から始まる研修について説明を受けている様子です。明日から研修頑張りましょう!
宿泊するホテルのロビーで、添乗員の方から宿泊する際の注意点や翌日から始まる研修について説明を受けている様子です。明日から研修頑張りましょう!
ホテルの部屋です。フィンランドといえば、サンタクロースの相棒、トナカイも有名です。これから4泊、よろしくお願いします。
ホテルの部屋です。フィンランドといえば、サンタクロースの相棒、トナカイも有名です。これから4泊、よろしくお願いします。
フィンランドでの最初の食事はホテルの夕食です。メロンやパイナップルが入ったサラダ(上写真)、かぼちゃスープ、サーモン(マッシュポテト添え)、ベリーパイというメニューでした。
フィンランドでの最初の食事はホテルの夕食です。メロンやパイナップルが入ったサラダ(上写真)、かぼちゃスープ、サーモン(マッシュポテト添え)、ベリーパイというメニューでした。

【その1】学科プログラム:フィンランド福祉研修

今年度も「フィンランド福祉研修」の季節がやってきました!

人間福祉学科ではこれまで、福祉国家といわれるデンマーク、スウェーデン、フィンランドを中心に「北欧福祉研修」を実施してきました。

 今回の研修先は、昨年度に引き続き、サンタクロースやムーミンなどで有名なフィンランドです。研修期間は2018年3月5日(月)~10日(土)(4泊6日)の予定です。

主な訪問先は、ヘルシンキ市で初めての「子ども・家庭向け総合センター」、キリスト教系福祉団体が実践している高齢者支援、アルコール・薬物依存支援、高等教育の施設などです。その他にも、ヘルシンキ市内研修やフィンランド人家庭での食事会も予定されています。

事前学習会の様子です。旅行会社の方から色々と説明してもらいました。これで安心してフィンランドへ旅立てますね!
事前学習会の様子です。旅行会社の方から色々と説明してもらいました。これで安心してフィンランドへ旅立てますね!
事前にフィンランドの文化や福祉制度を調べることも大切です。現地では、どんな出会いや学びが待っているのでしょうか??
事前にフィンランドの文化や福祉制度を調べることも大切です。現地では、どんな出会いや学びが待っているのでしょうか??

次回は現地フィンランドでの様子をご紹介したいと思います。
 

心理福祉学部 心理福祉学科 2018年4月開設

人間福祉学部「こども心理学科」と 「人間福祉学科」を統合した「心理福祉学部心理福祉学科」が2018年4月にスタートします。心理福祉学科では、現代人の心の問題と現代社会の福祉的課題について深く学び、共に生きる社会の実現に貢献する人材、特に有資格の心理専門職やソーシャルワーカーを養成します。

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