報告レポート:国際環境法ゼミ「オーストラリアにおける持続可能な開発と国際環境法の役割」

報告レポート:国際環境法ゼミ「オーストラリアにおける持続可能な開発と国際環境法の役割」

2023年10月18日更新

 2023年10月3日(火)に政治経済学科の国際環境法ゼミ(鈴木詩衣菜准教授)にてオーストラリアのキャンベラ大学環境ガバナンスセンターの博士研究員であるエヴァン・ハーマン(Evan Hamman)先生による講義「オーストラリアにおける持続可能な開発と国際環境法の役割」が行われました。

 ハーマン先生の専門は国際環境法で、当日はオーストラリアの持続可能な開発(SDGs)の取り組みとその課題、オーストラリア連邦における法制度および条約実施に関わる問題、特に、二国間の渡り鳥条約を用いて国際環境法ならではの条約の締結や実施の難しさについてお話しされました。

 講義では、オーストラリアではSDGsが普及する前から国内レベルで類似の持続可能な政策に取り組んでいたため、SDGsの用語が一般にあまり知られていないことを取り上げました。他方で、オーストラリアにおける連邦制度は、条約を締結する主体(連邦政府)と実際に実行する主体(州や地方議会)が度々異なるため、時として、実施が十分にできないことが問題であると紹介されました。

 また、国際環境法の効果的な実施については、日豪渡り鳥条約を例に、対象とする渡り鳥が移動種であるため一国の法だけでは十分な保護に至らないために、共通の渡り鳥が国境を渡る際には複数の国や地域、人々の協働による保護が不可欠であることを挙げました。

 授業の後半では、ハーマン先生より国際環境法の実施における政府や企業の役割や、国際環境法がなぜこれほどまでに分断化されているのかといった質問が提示され、ゼミ生はグループディスカッションを通じて、それぞれの考えを発表し、先生方よりコメントを頂きました。

国際環境法ゼミについて

 国際環境法ゼミはこれまでに国家がどのような環境問題に対応してきたのか、また国際社会が現在どのような環境問題に直面しているのかについて、国際環境法の側面から検討するゼミです。
 具体的には、多様な環境問題(越境大気汚染、海洋汚染、廃棄物、生物多様性の破壊、環境難民など)の背景、対立する利害関係国や利害関係者のそれぞれの主張、法的論点を丁寧に読み解き、また、それらに対して正確にまとめ、問題を発見する力を鍛えることも目的としています。
 また、国際環境法の研究を進めていくことは、環境問題に対する課題を法的な視点で考察する力を養い、批判的に考察し、論理的にまとめる力をつけていくことができる点にも意義があります。

当日の様子(写真)

二国間の渡り鳥条約について説明するハーマン先生
二国間の渡り鳥条約について説明するハーマン先生
これまでのゼミでの学びを振り返りながら講義を受けるゼミ生
これまでのゼミでの学びを振り返りながら講義を受けるゼミ生
ハーマン先生の講義を解説する鈴木准教授
ハーマン先生の講義を解説する鈴木准教授
授業の後半には国際法の問題についてグループディスカッションをするゼミ生
授業の後半には国際法の問題についてグループディスカッションをするゼミ生

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