報告レポート:政治経済学部【公開講演会】2022「『難民鎖国』日本が直面する世界」

報告レポート:10/19「『難民鎖国』日本が直面する世界」

2022年10月26日更新

政治経済学部【公開講演会】2022では、「戦争、難民、そして和解/平和」をテーマとしたシリーズ講演を全3回で実施します。1回目の10月19日は「『難民鎖国』日本が直面する世界」をテーマに、ロシアのウクライナ侵攻やアフガニスタンのタリバン復権などから生じた難民問題と日本政府の難民受け入れの問題について、毎日新聞社記者の和田浩明氏にお話しいただきました。

*本公開講演会はアセンブリアワーという聖学院大学の特色である独自の教育プログラムの中で行われるもので、政治経済学部を中心に多くの学生が事前学習を経て参加しますが、一般の方にも公開されています。今回は会場とオンライン(アーカイブ配信)形式で実施しました。

【概要】

和田浩明氏
和田浩明氏

「難民鎖国」日本が直面する世界
講師:和田浩明氏(毎日新聞社 記者)

  • 日時 2022年10月19日(水)10:40〜12:10

  • 場所 聖学院大学チャペル

  • 開会の言葉 政治経済学部長 八木規子

  • 開会挨拶  聖学院大学学長 清水正之

 

講演内容

和田氏は今回の講演で、難民や難民受け入れをめぐる日本の問題について以下のようにお話しされました。

難民について

  • 難民は人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員、政治的理由などにより、自国にいると迫害を受けるか、あるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々を指す。
  • 戦争によっても難民は発生する。今回のウクライナの戦争では国内外の避難民を併せて1390万人(全人口の3割)が難民となった。
  • 難民は困難を乗り越えた人でもある。なぜなら難民になるには様々な行動や手続きを経なければならないからである。体力、知力、胆力が必要。
  • 難民には誰もがなれるわけではない。避難のための車や飛行機のチケット、パスポートなどを手配することが難しい人などが多くいる。

日本の難民受け入れについて

  • ウクライナ難民の受け入れの公的支援と、アフガニスタンでのタリバン政権復権により日本に避難した人々への公的支援の差が大きい。難民受け入れは政治に左右されることがある。
  • ウクライナ難民の受け入れや生活支援自体は良いことであるので、これを他の難民にまで広げていくべきではないか。
  • 日本の難民受け入れ数は非常に少なく「難民鎖国」と批判されることも。これは難民認定の基準が厳しいことと、手続きが難しいことによる。
  • 日本で難民認定されるには、国籍国で当局に迫害の対象となっていることや、迫害を受けたことを証明できるものがなければいけない。しかし、現実に迫害を受けた、あるいは受ける恐れのある人が、そのような事実を証明するような書類を用意することは難しい。
  • 日本の難民申請の手続きは、膨大な書類作成が必要であり、その全てを日本語で作成しなければいけない。言葉の壁が非常に大きい。
  • スリランカ人女性やカメルーン人男性が入管で死亡した事例を受けて、難民申請が通らなかった人々の扱いも大きな問題となっている。
  • 仮放免となった人々の生活も苦しい。働くことも健康保険に入ることもできず、県外への移動にも入管からの許可がいる。仮放免の人々のなかには、日本で生まれ育ち日本語を話す子どもたちが多くいるが、その子どもたちには住民票がなく、十分な教育や社会保障を受けられずにいる。

当日の様子(写真)

次回の政治経済学部【公開講演会】2022

  • 【第2回】国連、国際法から見た武力紛争、避難民と和平
    日時:2022/11/30(水) 10:40-12:10
    場所:聖学院大学チャペル
    講師 広見正行先生 (神戸市外国語大学准教授)
  • 【第3回】難民を取り巻く 世界の潮流と日本の課題 ~シリア、アフガニスタン、ウクライナの事例から
    日時:2023/1/18(水) 10:40-12:10
    場所:聖学院大学チャペル
    講師 石井宏明氏 (一般社団法人パスウェイズ・ジャパン(PJ)理事/一橋大学国際・公共政策大学院 非常勤講師)

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