【学生による活動レポート】ある春のための上映会~命と向き合うとは~

2023年8月30日更新

本イベント実行委員長の髙寺美桜さん(人文学部 日本文化学科4年)による活動レポートです。

ある春のための上映会~命と向き合うとは~

2023年7月1日(土)に学生実行委員会主催、ボランティア活動支援センター共催で映画上映会『ある春のための上映会~命に向き合うとは~』を開催しました。企画を行った学生実行委員は、今年2月に実施した東北ボランティアスタディツアー(以下、スタディツアー)に参加した学生です。

上映作品は、スタディツアーで実際に訪れた「石巻市震災遺構 大川小学校」(以下、大川小学校)に関連する映画です。当日は作品の監督である佐藤そのみさんをお迎えし、学生と地域の皆様と全員で向き合うべき命と未来について考えました。

上映会までの経緯

今回の上映会企画の始まりは、2023年2月に開催された東北ボランティアスタディツアーでした。今回の企画の立案者である私は、スタディツアーで宮城県石巻市に訪れ「Team大川~未来を拓くネットワーク~」の皆さんから、東日本大震災で子供と教職員、たくさんの命が犠牲になった大川小学校のあの日の出来事を聞きました。のどかな場所であったことや子供たちの様子、そして、未来を拓いていく子供たちが何故亡くなったかをお聞きしました。また、大川小学校の敷地内にある伝承館で私と同い年の女の子のランドセルを見つめて、命に向き合いました。

向き合っていた私自身も、スタディツアー前に初めて身内の死を経験しました。加えて、自身の存在意義を問うていた時期でもありました。そのため、長期的に命と死と生を感じていたため大きく心を揺さぶられました。

スタディツアー直後、「Team大川~未来を拓くネットワーク~」さんのFacebookを拝見していたところ、私の故郷である長野県で大川小学校関連映画の上映会があるという情報を得ました。「私はこれを観なくてはいけない」、直感でそう感じました。帰省の予定を早め、宮城から埼玉に帰った2日後、必要物品を鞄に詰めなおして長野に向かいました。長野に帰省した2日後に母方の祖父が亡くなりました。再びそこで原点としていた命とは何なのかという問いと向き合いました。その状態で上映会に足を運びました。

上映会当日、映画の内容に深く思いを寄せ、メイクがボロボロになるほどに号泣しました。大川小学校を訪れたのは6日前だったので、映像の向こうで話していた人たちが鮮明に映り、自分のやらなければならないことが明確に見えたからでもあったと思います。それは、希望でもあり絶望でもありました。絶望の要因の一つは、来場者に若い人たちが少ないことでした。私はこのことに危機感を覚えました。この映画をもっと見せなくてはいけない人がいる。その一心で今回の企画を立ち上げました。

実行委員会の願い

上映会の実行委員会メンバーは全員が大川小学校に訪れた人たちでした。みんなで思いを共有して出た共通の言葉は、「大川小学校を知ってほしい、何が起きた場所なのか知って命に向き合う機会になってほしい」という願いでした。その願いを柱にして、さらに「大川小学校の温かみを知ってほしい」「スタディツアーの際に語り部をしてくださった只野さんの想いを聞いてほしい」「震災遺構として残された意味を考えてほしい」など各々のそれぞれ抱いていた想いを肉付けしていきました。

それは、あの日あの場所で失われた74人の命ため、私たちからできる哀悼の意を多くの人と共有するためでもありました。

実行委員による挨拶
実行委員による挨拶

学生と監督の対談の様子

当日映画上映後に壇上で佐藤そのみ監督と実行委員の学生3人による対談を行いました。対談の中では、災害との向き合い方や途方もない時間との向き合い方など、様々な面から命に向き合うためにどうしていくのかという話を深めました。

印象に残った映画の一場面と学生自身の思いの丈をそのまま監督に聞いていただき、そこに監督がどんな思いを載せていたのかをお聞きしました。私たち実行委員の想いにお答えいただく形で、映画の表面的な部分だけでは一見理解できない監督の想いや大川小学校に関係していた様々な人の当時の様子を鮮明にお話しいただきました。お話の中には、映画の主人公たちに投影させていた当時の東北の様子などもお聞きし、その場にいた全員で気持ちを共有していく時間になりました。

特に印象的だったのは、行動の異なる主人公2人の対比表現が震災後の人々の雰囲気を投影していたというお話でした。

「前を向こうとする人、向き合えない人、メディア発信をする人、それを嫌悪する人、全員が何かに苦しんでいる。支えあっていく人たちがみんな余裕なく溝ができていた。」

震災、人災、メディアなど、向き合うべき事象の多さに改めて気づかされた言葉でした。

監督と実行委員の対談
監督と実行委員の対談

映画上映後の感想シェア会の様子

対談後には、聖学院大学の学生と、地域の方や卒業生を混ぜたグループを作り、感想シェア会を行いました。

感想シェア会のお題は以下の二点でした。

・映画の感想[印象に残ったシーン]

・監督から来場者への質問[将来の夢や目標は何ですか?]

映画から東北の過去と現状について知る。そして、自分を含めた未来の話を年齢、性別、所属関係なく話し合いました。難しいお題であったため、悪戦苦闘する一面もありました。しかし、それでもその場にいた全員が心から向き合っていました。たくさんの想いが飛び交い、あまりにも時間が足りないと思うほどに濃密な30分間でした。

最後にそれぞれのグループの感想を共有したとき、佐藤そのみ監督から「こういった形で映画を観た方から感想をいただくことがないため、すごく新鮮です。」というお言葉を頂きました。その時、自分が企画した際に抱いた目標の一つを達成できたように思いました。

この詰まった思いを夏のスタディツアーで現地にも届けていきたいと強く思いました。

まとめ

今回の上映会を企画した際、自分が中心になりすべてを運営する企画は初めてだった上、ボランティア活動支援センターとの共催であり、様々な不安に押しつぶされた時もありました。それでも、私は一人でも向き合ってくれる人を増やしたいという信念を貫くことを大切に周りの多くの人に背中を支えてもらいました。この場をお借りして、関わってくださったすべての皆さんに感謝申し上げます。

ありがとうございました。

※学校法人聖学院はグローバル・コンパクトに署名・加入、SDGsを目指した活動を行っています。

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【動画で見る】東北ボランティアスタディツアー

聖学院大学は東日本大震災復興支援活動を継続的に行ってきました。2月18日(土)〜20日(月)の3日間、3年ぶりに現地へ足を運び、学びと交流の時を持ちました。

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