「東北ボランティアスタディツアー2023年冬」活動レポート

2023/3/13更新

2023年2月18日(土)~20日(月)の3日間、東北ボランティアスタディツアーを開催しました。新型コロナウイルス感染症拡大以降、約3年ぶりの完全対面開催のボランティアツアーです。学生17名、教職員8名が参加し、感染症対策を徹底しながら大型バスで宮城県石巻市へ向かいました。企画・運営を担ったプロジェクトリーダーの3名の学生と共に、震災遺構や津波被害を伝える伝承施設の見学、地元の方との交流を図りました。

【動画で見る】東北ボランティアスタディツアー

聖学院大学は東日本大震災復興支援活動を継続的に行ってきました。2月18日(土)〜20日(月)の3日間、3年ぶりに現地へ足を運び、学びと交流の時を持ちました。

震災と津波の伝承施設を見学

ツアー初日は東日本大震災の記憶と教訓を学ぶため、“みやぎ東日本大震災津波伝承館”(以下、伝承館)と“石巻市震災遺構門脇小学校”にて、それぞれの語り部の方々にお話を伺いました。事前に映像学習はしていたものの、東北に初めて訪れるという学生も少なくなく、「被害の大きさが想像以上でした」という声も多く聞こえてきました。語り部のみなさまは、実体験を踏まえながら「自分たちの経験を未来に伝えよう」という気持ちを言葉に乗せてお話をしてくださりました。その気持ちをしっかりと受け止めるように、静かに話を聞く学生の姿が印象的でした。

伝承館は、“石巻南浜津波復興祈念公園”(以下、祈念公園)の中にあります。祈念公園は海に面しており、東日本大震災の際には津波が襲い、多くの方が犠牲になりました。現在では人が住めなくなった土地に祈念公園と伝承館がつくられています。公園内の高台に登り、海風を感じながら、当時の暮らしに想いを寄せ、犠牲になった方々に祈りを捧げました。

みやぎ東日本大震災津波伝承館/石巻南浜津波復興祈念公園
みやぎ東日本大震災津波伝承館/石巻南浜津波復興祈念公園

日和山公園を見学

石巻市内を一望できる場所としても知られる日和山公園は、震災当時、多くの人が津波から避難し、たくさんの命を救った場所です。当時は雪が降っており寒く、少し暗い空模様でした。今回私たちが訪れたのも薄暗くなった時間帯でしたが、避難し、町が津波に飲み込まれていく様子を山の上から見ていた方々の気持ちに想いを馳せました。一方で、日和山公園からの夜景は美しく、一日学んだことを思い起こしながら、今と過去を反芻し「今ここに自分がいること」を感じている学生もいたように思います。

日和山公園から町を一望
日和山公園から町を一望

震災遺構大川小学校の見学

ツアー2日目、“震災遺構大川小学校”を、同校の卒業生でもあるTeam大川-未来を拓くネットワーク-(以下、Team大川)のみなさんに案内していただきました。Team大川のみなさんとは、これまでの東北“オンライン”スタディツアーでも連携をさせていただいています。

この日は寒い雨が降り、足元には数日前に降った雪が残る状況で、当時の寒さに似たものを追体験することとなりました。Team大川のみなさんは震災時それぞれの身に何が起きたかを赤裸々に語ってくださる一方で、母校としての楽しく大切な思い出話も沢山教えてくれました。写真の壁画にある「未来を拓く」という言葉は、大川小学校の校歌のタイトルで、 Team大川-未来を拓くネットワーク-の名前にも使われています。悲しい出来事があった場所として知られている大川小ですが、私たちの「未来を拓く」場所になっていく。そんな願いが込められていることを知りました。どのような「未来を拓く」かは、このツアーに参加した一人ひとりに掛かっているように感じました。この後は、道の駅上品の郷で昼食休憩をはさみ、当時避難場所として開放されていた河北総合センターに移動します。

石巻市震災遺構大川小学校
石巻市震災遺構大川小学校

Team大川-未来を拓くネットワーク-との交流

聖学院大学からは25名、Team大川からは7名、計32名が一つの空間に集まりました。初対面同士で話をするには、まずはフラットであたたかな場の空気づくりが必要です。プロジェクトリーダーたちが事前に考えてきた、お互いの距離を縮めるゲームから始めました。好きなあだ名とポーズを決めお互いに呼び合う「ネームゲーム」や、「Who am Iテスト」と呼ばれる自己認識が露わになるテストを応用した「10答法ゲーム」などを行い、場はとても和らぎました。

その後、Team大川が昨年から取り組む「おかえりプロジェクト」に込めた想いを伺いました。Team大川のみなさんは「子どもたちを真ん中に」というキーワードをよく仰っています。その言葉の背景には何があるのか、そして具体的にどの様に子どもと接することを指しているのか、丁寧に語っていただきました。他にもピアノやオカリナ演奏を通して、“今のTeam大川が感じ、考え、実践する全て”を言葉だけでなく心と体で表現していただき、その後のグループワークに入っていきます。

グループワークでは、①おかえりプロジェクトに関わる時、何を大切にしたいか ②具体的に何をしたいか の2つの問いを立て、意見交換をしました。事実を知り、想いを馳せ、考え、誰かと繋がる、対話する。今回のツアーは、参加者一人一人にとっても、Team大川との連携という点においても、大切にしたいことから丁寧に話し合い、「ここからがスタート」となる時間となりました。

東北の魅力発見

3日目は、女川駅周辺(シーパルピア女川)といしのまき元気いちば周辺の散策です。プロジェクトリーダーから、それぞれの地域のオススメスポットや、是非食べて欲しいものの紹介をしてもらい、自由に見てまわりました。女川駅と海の間には“震災遺構旧女川交番”があり、震災当時の状況と、誰がどんな思いでどのようにかかわって今の町の姿となったか、丁寧に綴られていました。参加者はそれぞれ、そういった展示を見たり海を眺めたり、お店の人と話したり、地元の食を堪能したりして過ごしました。

震災遺構旧女川交番
震災遺構旧女川交番

参加者、プロジェクトリーダーの感想

・ただ復興していくのを見て考えるのではなく、それまでにどういう考えがなされてつくられていったのかも知れるいい機会になったと思いました。

・伝承館での説明を聞いた際、建物の構造、中身、展示、説明をしてくださった方、その全てが伝承に徹していることを感じました。説明をしてくださった方も、もちろん震災を経験している方で、その方が辛さも込みで伝えてくださるからこそ、今私はこの場所で何ができるのか考える場所を与えられている。そう実感し、気が引き締まりました。

・まだまだ知らない事が多くあるのだと今回のツアーを通して学びました。学びを深めるためには、事前の知識や情報が必要になってくるのだとわかっていても、見過ごしている部分がまだまだあり、それをまずもっと知ることから始めるからこそ、初めて学びを深めたと言えるのではないかと感じました。色々なことを知っていき、自分に落とし込み、そこから理解が深まるようなサイクルを自分でも作っていきたいなと思いました。

・防災の日常化をしていきたいと思います。その為にも、地域と自分の関わりを振り返り、私ができることは果たして何なのだろうとまず私自身に問いたいなと思いました。それをした上で、私から家族へ家族から親戚へ防災や命、これからに関する考えの連鎖が生まれるようにしていきたいと思います。

・今回の東北で学んだ東日本大震災を他の人にも関心を持ってもらいたいと思い、まずは地域に協力をお願いし回覧板などに資料をつけたりしたいと考えた。

・東日本大震災は人の心が変化するほどの脅威であったと改めて感じた。その悲惨さから回復するにはものすごい時間と労力と、そして支え(支援)があったから「未来を拓く」ということに繋がったと思うと、改めてその行動力がすごいと感じた。石巻だけではなく、宮城の他の地域、また東北の他県、など様々な地方の状況をもっと知りたいと思った。加えて、実際に行ってみたい。

※学校法人聖学院はグローバル・コンパクトに署名・加入、SDGsを目指した活動を行っています。

SDG.png  4.png  11.png  17.png

関連情報はこちら