音楽を通じた学級指導、声と伝達(子ども教育学科:久保田翠准教授)

子ども教育学科の学びの“今”を伝える、教員による授業紹介コラムです。

子ども教育学科の「教職実践演習(小)」

2023年12月15日更新

 音楽についての基礎知識や理論は、入学後すぐに様々な授業を通じて学びます。とはいえ、演奏実践や感覚の共有を伴う音楽の授業には、独特の難しさもあります。

 先日の「教職実践演習(小)」では、音楽の授業をより効果的に実践し、一歩深く踏み込んだ活動を児童とともに行うための内容を扱いました。

 まずは発声についてのおさらいです。「人間一人一人には、それぞれ自前のマイクがある」聖学院大学で聖歌隊のボイストレーナーを務めるテノール・オペラ歌手 渡辺大先生の言葉です。このマイクを意識することで、声がより響き、遠くまで通るようになります。そのメカニズムについて、今一度復習しました。

 正しい発声を学ぶことの意義は、単に歌を上手く歌えるようになるというだけではありません。正しい発声は喉に負担をかけることがなく、ポリープといった喉の不具合を避けることができます。そしてなにより、声が明瞭に響くことで、相手に効果的に内容を伝えることができ、自信を持って他者と関わることができるのです。このことは、教員になる上で、また社会人として他者と関わっていく上でとても重要となるでしょう。

「自前のマイク」を意識しながらの発声や声の響きを確認する学生たち
「自前のマイク」を意識しながらの発声や声の響きを確認する学生たち

 次に、学生たちは作曲に取り組みました。授業で児童が主体的に音楽に関わり、楽しみながら音楽を実践するためのひとつの事項として、「音楽づくり」があります。「音楽づくり」や「作曲」というと難しく聞こえるかもしれませんが、誰でも簡単な工夫で作曲をできるような手法を学ぶことで、音に対して身近になり、より自分のものとして音楽を捉えることができるようになるのです。

 学生たちは、自分の名前を構成するアルファベットを素材として、それらを音に置き換えました。そのようにして得られた音に、リズムをつけることで、その人だけの旋律が出来上がりました。授業に出席した学生たちは、個々人の名前によって結果がまるで異なること、時には思ったよりも音数が少なくなったり、多くなったり、予想外の音の動きが得られたりすることに楽しそうな声をあげながら、ひとりひとり旋律を作曲していました。隣の人と五線譜を見比べながら、互いの違いに驚きの声をあげている学生もいました。

 バランスよくリズムをつけるためには、音楽理論の理解が必要ですし、耳で聴いて良い旋律になったか判断することが求められます。これまでの学びが生かされるとともに、自分の手で音楽を作り、工夫することの楽しさを感じていたようです。出来上がった旋律をさらに他の人の旋律とつなげたり、あるいはコードをつけたりすることで旋律がより「音楽作品」に発展することなどにも触れました。

卒業を控えた4年生たちが、教育現場での活用を意識しながら真剣に学んでいます
卒業を控えた4年生たちが、教育現場での活用を意識しながら真剣に学んでいます

 今年の4年生は、入学してすぐにオンライン授業となりました。上で行った発声や読譜、楽器演奏といった身体の制御は音楽の学びの中に含まれますが、オンラインでそれらを学ぶのは大変だったと思います。折角の機会でしたので、読譜の際の目の動かし方のコツや、空間の響きに耳を傾けることなども、今一度確認しました。

 当日の学生の様子からは、音楽を実践することの楽しさや、自分の工夫によって様々な可能性が拓けてくることを感じているのが窺えました。音楽を学ぶことの最終的な目標は、「音楽を楽しく分かち合う」「音楽を感じ、理解を深める」ことにあります。知識や技量を身につけることはもちろん大切ですが、それだけではなく、学んだことを通じてより自分を理解し、他者を理解することができるのです。

科目について

 「教職実践演習(小)」(15コマ)は小学校教職課程の最後の必修科目です。卒業を控え、教職課程で力をつけてきた歩みを「教職履修カルテ」を通して振り返り、既習事項を教育現場での活用を意識して深め、学んだあとに法令改正があった事項や新たに社会問題になっている事項を補い、小学校・特別支援学校の教員としてのはたらきに備えます。子ども教育学科では、毎年、その年の4年生の4年間を振り返り、必要な15コマ分の教授内容を吟味して授業計画を調整しています。
 今年の4年生は初年次がオンライン授業中心でした。対面で学べなかった分は「教職実践演習(小)」で取り戻すので安心です。

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