【報告】1/16 公開講演会・シンポジウム「子ども・若者たちの貧困」

報告レポート

心理福祉学部・人間福祉学部
公開講演会・シンポジウム「子ども・若者たちの貧困」

1月16日(水)、大学創立30周年を記念して「子ども・若者たちの貧困」をテーマに公開講演会・シンポジウムが行われました。(学生・教職員・一般あわせて145名参加)

第1部の公開講演会では、NPO法人ほっとプラス代表で本学客員准教授の藤田孝典先生(社会福祉士)が、若者たちを取り巻く貧困問題の現状や課題についてさまざまなデータを基に説明・分析しました。

「貧困格差は深刻。全世帯で貧困が広がっている。特にひとり親家庭の貧困率は5割を超えていて、OECD(経済協力開発機構)に加盟している国の中では最低水準」

「子どもの貧困は、育てている親が苦しいということ。これが教育格差にもつながっている。奨学金という名のローンも問題。日本はほかの先進国に比べて子どもや若者への手当が少なく、家族負担が極めて高い」
藤田孝典先生「対策をしないと貧困は無くならない」
藤田孝典先生「対策をしないと貧困は無くならない」

第2部シンポジウムでは、藤田先生をコーディネーターに、本学人間福祉学部4年の佐山奈々恵さん、上尾市子ども支援課の精神保健福祉士上村真木さん、東京合同法律事務所の市橋耕太弁護士が登壇し、それぞれの立場から話しました。

(左から)藤田先生、佐山さん、上村さん、市橋弁護士
(左から)藤田先生、佐山さん、上村さん、市橋弁護士

佐山さん「生活保護に悪いイメージを持っていたが、藤田先生の「公的扶助論」の講義を受けた時に、思い切って相談してよかった。不正受給などは一部のことで、本当に助かる人も多い」

上村さん(上尾市の母子父子自立支援という相談業務の経験を踏まえ)「家族のトラブルがきっかけで世帯が壊れて貧困になるケースや、住むところを失ってしまった相談も多い」「子どもの貧困対策をできるのは大人。所属している場所の大人が気付いて、どこかにつないでほしい」

市橋弁護士(労働専門の弁護士として)「将来の不安からブラック企業と分かっても辞められない。悩んだら行政の窓口や労働組合に相談をしてほしい。若者の雇用と社会保障は喫緊の課題」

藤田先生「若者たちは声を上げましょう。そして、周りにいる人がその声をくみ取ることが大切」
藤田先生「若者たちは声を上げましょう。そして、周りにいる人がその声をくみ取ることが大切」
質疑応答の様子
質疑応答の様子

貧困は以前は見た目でわかるなど可視化されていたが、最近の貧困は実はひたひたと身の回りに近づいていて、自分がいつのまにか気づかぬうちにその状態に陥っているような見えにくいものであり、相談もしにくく、孤立してしまうなどますます見えずらくなってしまっているということが共有されました。
まずは誰かに相談する、声を上げることが未来につながるということが共有されたように思います。

聖学院大学では、今後も本テーマを学生、そして地域の皆様と共に考えてまいります。

参加者の感想

*一部抜粋にてご紹介します

  • 私たちの生きる社会は、貧困や労働の問題、未婚化など、様々な相関の中で不安要素と隣り合わせの生活となっていることが明確に浮かび上がってきた。政策等、構造的な問題(社会保障のあり方や行政)がそれらを引き起こすのであれば、個人の努力に問題の原因を帰結させることは間違っているということを心に留めなければならない。であれば、その受け皿となる福祉や、相談機関がたしかな安心の場所になるのが大切だと思った。実際の事例などに触れると、同じ社会に生きている人がリアルな困り事として問題を抱えている状況だということに気付かされた。自分の問題ではないと、それらが見えない・わからないで済ましてしまいかねないので、それはこれからの学びの中で理解を深めたい。自分が今まさに、どのような社会に生きているのか、また何ができるのか?それらの問いを投げかける貴重な機会になった。
    (心理福祉学部1年)
  • 子どもの貧困は大人の貧困という言葉が非常に印象に残った。
    (立場の異なる3名のシンポジストの話を聞いて)実際に起きていることの内容が社会にあふれているのかと思うと、将来ソーシャルワーカーとして働きたい自分にとっては早く何かしらの対策を提案できるようになりたいと思った。
    (心理福祉学部1年)
  • 自分の国と違いなく、お金のある家は子どもの成績が高く、逆にお金のない家は子どもの成績が悪い。そういう話を聞くと心が痛い。自分自身の経験から、子どもの貧困をなくしてほしい。日本は世界の発展している国々の中にいると思いますが、子どもの貧困はびっくりするくらい、まだまだ大きな問題がある。
    講演の内容で「働いても貧困はなくならない」がなかなか理解できない。どうすれば良い労働になるのか。
    (人間福祉学部3年・留学生)
  • 今現在の実情について知ることができ、日本はまだまだ対策が不十分であるということも知れました。
    ・今後どのような対策が必要なのか
    ・貧困になってしまったらどうすれば良いのか
    ・貧困にならないためにはどうすれば良いのか
    について、聞きたかったです。
    (人間福祉学部4年)
  • 講演会で、他国には若者に対し家賃制度があることを知った。
    困窮してから人を救うのはおかしいのではないかと思う。そこから救う人たちは、支援を受けられるというよりも、申しわけなさの方が大きいのではないでしょうか。大人の中にも、二十歳くらいに一人暮らしをし、収入がない中、暮らしていた時期があった人もいると思う。他国から学び日本も同じような支援をするのではなく、自分の経験や周りの経験から支援を開拓する必要があるのではないかと思った。
    (人間福祉学部4年)
  • 目に見えづらい問題だからこそ、周囲の気づきが大切であり、そのためには他者への関心を抱ける教育が求められていると感じました。
    (本学教員)
  • 当事者、役所、就労の現場の実態が一度に聞けた本イベントはとても良かったです。この3つのことは、支援を行ううえの重要なキーポイントなので。今後も同様な講演会の開催を期待します。
    (一般)

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