> 教員メッセージ一覧に戻る
ことばってなんだろう?
石川由美子先生

こども心理学科 石川由美子

【子どもはどうしてことばを話せるようになるのだろう?】
 生まれたばかりの赤ちゃんは、はじめ私たちが話すことばを理解していません。それなのにいつの間にかことばを理解し、ことばを話すようになっていきます。不思議だな~と思いました。人がことばを話すようになることに仕組みがあるとするなら、その仕組みを知りたいと思いました。それからもう長い長い時間が過ぎました。それなのにまだ、ことばって何だろう?どうして人はことばを話すようになるのだろう?と、飽きもせずに考えて毎日を過ごしています。

【ことばをうまく使えない子どもたちとの出会い】
 ある時、ことばをうまく使えない子どもたちの存在を知りました。発達が遅れている,耳が聞こえない,筋肉の麻痺,精神的な問題など、ことばをうまく使えないことは一緒でも、その理由はまちまちです。そして、いつの間にか、ことばのことを考えながら、ことばをうまく使えない子どもたちと一緒に過ごすようになりました。そんなこどもたちひとりひとりが自分だけの声で、自分だけの物語を語りだすとき、その語りを一番先に聴く人でありたいと願うようになりました。

【ことばは人間の自由の証し、想像力の源、そして生きる希望をつくり出すもの】
 レオ・レオニの絵本に「フレデリック」というちょっと変ったねずみのお話があります。フレデリックは、冬支度をしている仲間たちとは一緒に行動しません。仲間たちは、そんなフレデリックにちょっと腹を立てていました。働かないねずみに見えるのです。でも、フレデリックは、冬支度の期間、たくさんのことばを集めていたのです。そして、冬の厳しい時間、くじけそうになる仲間たちに集めたことばを語ることによって、不自由な冬篭りの場に想像力という自由な空間をつくり出しました。そして、仲間たちに明るく生き抜く希望を与えていたのです。
 はじめに、ことばは自分の外にあるものです。人との温かい関わりによって、ことばは自分の内に育ちます。自分の外と内をつなぎ、いつしか自分を超えて人のために使うことばを語るようになるのです。そんな温かいことばをもつ子に育ってねと、願いながら子どもの育ちに寄り添う。ことばの育ちに関する学びと実践は、こども心理学科が目指す痛みと悲しみをもつ人々へのケアを具現化する一つの取り組みのように思っています。

> 教員メッセージ一覧に戻る