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寄り添える人って?
大橋(川村)良枝先生

こども心理学科 大橋(川村)良枝

 聖学院大学こども心理学科に少しでも関心を持たれた皆さんは、こども心理学科が「寄り添う」という言葉を大事にしているのにお気づきでしょうね。「寄り添う」と聞いてどう思われましたか?「私もやりたい!」「あたりまえじゃない」「いつもやってるよ!」と、いろんな声が聞こえてきそうです。

 私は臨床心理の現場で、「寄り添うって難しい」「寄り添うって何だろう」と悩み、新しい答えを見つけ、そしてまた悩み・・と、まだ最後の答えに辿りつかずにここまでやってきたように感じています。 

 例えば、こんなことを悩んだりします。「寄り添う」つもりが、相手の弱さにばかり目を向けていないかしら。それって、自分が偉いと思いたかったり、自分の弱さを隠すためだったり・・、そんな自分勝手さが知らないうちに出てしまっていないかしら。
また、ある時は、「寄り添」えなくなります。例えば、怒るのが苦手な人がいるとしましょう。そういう人は、自分の中に怒りが湧くと、知らないうちに人から逃げてしまいます。逃げてしまえば寄り添っていられません。こんな風に自分の中の小さな癖が「寄り添う」のを邪魔することって、本当によく起きるのです。他にも、絶望的だと感じられる状況の中に居る人に「寄り添う」って、本当に忍耐力と精神の強さが必要なことです。

 私の専門とする臨床心理学の理論は、人の傍に居るのに適切な方法や態度について何年も何年も研究を積み重ねています。何故か?とても大事なことだからです。「臨床」とは、「(死の)床に臨む」、つまり、死にゆく人の傍にいるという語源を持っています。英語の「Clinical(臨床)」も同じです。「臨床心理学」の本質は「限界状態の人の前で、人は何ができるか」を追求すること、つまり、人の傍に居るとは何かを考え抜くことにあります。ですから、私も学生に対して、「寄り添う」って「あなたにとって何?」ということを問い続けます。それが大学の勉強のあり方だと思うからです。

 そんな学びを面白いと思ってくれた学生、そういった生き方を好きだと思って臨床心理学の専門家になりたいと思ってくれた学生が、私のゼミにはたくさんおります。その中には大学院進学を目指している学生もおります。受験的なお勉強が得意な学生は一人もいませんが、私や仲間たちと協力し合いながら進学の準備を2年次より進めています。他にも保育士を目指す学生、特に専門家になりたいわけではないけれど、こういったことを学ぶのが好きだから毎週欠かさずゼミに熱心に参加する学生など、様々です。共通しているのは、皆、人に寄り添うことについて考え、子どもを育める良い大人になりたいと真摯に考えている学生たちだということです。そして、教員である私は、彼らが望むような自分になっていくことを手伝うことで、彼らに寄り添えたら、と願っています。

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