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「今、立ち止まってみる?」
「今、立ち止まってみる?」
 アクション映画の名作「スピード」をご存じであろうか。
 犯人は、バスに爆弾を仕掛け、時速50マイル(時速80km)以下になると爆発するという設定にしている。このバスに乗ったジャックが、同乗の乗客たちの協力を得て、この事態に対処していく。とにかく走り続けなければならない。そのうえで、爆発回避の対応を考えなければならない。当然、バスは、信号を無視する。渋滞のなか路肩を突進する。危ない急カーブも速度を落とさずに回りきる。

 映画の、このような設定は、「今、止まるととんでもないことが起きるに違いない。走り続けるしかない」という現代人の心の持ち方と重なる。

 作品中の最大の見せ場は、バスが高架橋の途切れた部分にさしかかったときである。
 バスはかえって加速し、一か八か大ジャンプをし、成功するのであった。
 これは現実にはあり得ないことである。
 しかし、ピンチになればなるほど速度をあげ、一か八かの賭けに出るところは、まさに現代人の生き方そのものを表現しているように見える。

 この映画は、いかに私たちが日々の生活の中で立ち止まるのが難しいのかを教えている。
それでは続編の映画「スピード2」はどうか。今度は、バスでなく、主人公たちは、豪華客船に乗ります。この船がコントロール不能になってしまい、暴走する。今度は、止まろうとするのだが、その止まり方がわからない、そんな苦しさを示していると考えられる。
 立ち止まる必要を自覚するのも難しいが、実際に立ち止まろうとする際、その方法も難しいのである。

 人は、とにかく頑張るようにと教育を受けている。しかし、人生のところどころでは、きちんと立ち止まったり、減速したりすることが必要なときがある。息切れが強まっているときなど、潔く立ち止まれたら良いのだが、なかなかそうできない。

 「スピード」「スピード2」と主演を果たした女優のサンドラ・ブロックは、その後「28DAYS(デイズ)」という映画に主演し、アルコール依存症者役のヒロインを演じている。彼女は自暴自棄に酒を飲み、暴走を続けるが、更生施設の中で、同じ依存症を抱えるメンバーの集うグループに参加しながら、変化、成長していく。更生施設で、28日間生活をし、そこを出るときには、まったく新しい生き方を手に入れていた。
 この作品は、私たちが立ち止まるためには、他の人の存在が必要であり、深い交流により、それが可能であることを教えてくれる。

 立ち止まることは、語り合うことと関係している。
(by けい)

参考:
DVD映画「スピード」(FOX)
DVD映画「スピード2」(FOX)
DVD映画「28DAYS(デイズ)」(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

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