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人生の時計
人生の時計

 ある中学校の校長先生が、卒業式で、「人生時計」という話をした。自分が人生のどこにいるのかを、一日24時間の時間で考えるのである。その計算はいたって簡単で、自分の年齢を3で割るだけである。

 たとえば15歳の中学3年生は、3で割ると5となる。人生の午前5時にいることになる。まだ夜明け前の、長い一日のスタート地点にいる。校長先生は、巣立っていく卒業生たちに、人生まだ始まったばかりであることを伝えたかったのである。

 それでは、18歳の場合ならどうであろうか。午前6時である。やはりまだまだ早朝である。いくらでも可能性のある時間が待っている。そして太陽が昇り、頂点を目指していく。それは真昼時(午前12時。36歳)である。いうなれば、人は、35,36歳を目指して、自分の人生を広げていく。なんとかこれでやっていくのだという自分を作っていくのである。やがて折り返し地点を通過すると、人生の午後となり、人生を深めていく作業に入る。撤退や断念もあれば、充実感もある。そして50歳を過ぎるようになると、夕暮れが訪れ、日没が迫ってくる。働き盛りでもあるが、同時に老化と死の備えに入る時期となる。

 あなたは、いま、人生のどの時間にいるのであろうか。あなたの家族や知り合いは、人生のどの時間を通過しているのであろうか。そして、将来出会う人たちは、あなたの時間とどのくらい近くて、離れているのであろうか。

 私たちは、生活の中でいろいろな人生の時間を生きている人に会う。自分の人生の時間も、周囲の人たちの人生時間も、かけがいのない時間であり、その輝き方が異なっている。今度、朝一番に起きて、朝焼けの街を眺めながら、自分の人生時間を体感してみてほしい。

(by けい)

参考)
「人生ゲーム」(タカラトミー)2008年、人生のシュミレーションを味わうための古典的ゲームボード。現在のデザインは第6版。

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