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子どもなのに大人?大人なのに子ども?
居場所どこに

 最近、ある学生さんに紹介されて恩田陸の小説を読んでいる。その中でも『ネバーランド』『蛇行する川のほとり』『夜のピクニック』などの高校生を主人公としたものにとても心が揺さぶられた。主人公たちは男の子も女の子も、友人や家族との距離感に悩み、でもその関係の中から自分でも気づかなかった自分に気づいたりと、さまざまに葛藤している。そうしながら、みな自分の居場所を探しているように思えるのだ。

 『夜のピクニック』は、ただひたすら高校生が歩くだけの話である。朝の8時から、翌日の8時まで、80Kmの道のりを全校生徒1200人が歩き続けるという年に1回の行事が舞台である。その長い道のりの過程で、主人公たちは普段は語らないような話をしたり、知らなかった友人の顔を知り、自分の気持ちに気づいていく。知らず知らずのうちに演じている「友人同士の役割」から抜け出して、お互いを、自分を見つめるようになる主人公たちが何と大人びて見えることか!正に「居場所」を見つけた瞬間に立ち会っているような感覚である。

 自分の高校時代のことを思い出してみる。大人から「まだまだ子どもね」と言われると「もう子どもじゃないよ!」と思うのに、逆に「もう子どもじゃないんだから」と言われると急に心細くなったり。友達と一緒にいると楽しいんだけど、どこか落ち着かない気持ちがあったり。理由もなくイライラしたこともあったし、我を忘れるくらいひとつのことに没頭したこともあった。と、思い出される記憶は大きな事件や出来事ではなく、どれも日常の断片なのがとても不思議だ。

 青年期は、それまでの経験をまとめて「自分らしさ」を見つける時期である。大学時代は「青年期真っ只中」!そんな青年期にある自分を、心理学を通して体験するのはいかがだろう。

(by うた)


●お薦め参考図書
「ネバーランド」  恩田陸 (集英社文庫)
「蛇行する川のほとり」 恩田陸 (中公文庫)
「夜のピクニック」 恩田陸 (新潮文庫)

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