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ギャングエイジの時代
ギャングエイジイラスト
 昔、小学校の3年生だったか4年生だったのか、忘れてしまったけれど、藁葺き屋根の廃屋に登り、屋根を踏み抜いたことがあった。間一髪で、屋根と共に地面に落ちることは免れた。
 あの時、落ちていたら、大きな怪我をしていたことだろう。もしかしたら、そのまま死んでしまっていたのだろうか?
 こどもの私にはかなり重大な出来事であったのに、結局、親に話すことはなかった。
 それはなぜか?理由はよくわからない。ただひとつ、今でも確信できることがある。あの時、もし落ちて、怪我をしても、そのまま命を失う事態であったとしても、たとえどういう状況でも、一緒に遊んでいた仲間のうちの誰かが、助けを呼びにいってくれたであろうこと。そして誰かが助けようとしてくれたであろうこと。
 「ギャングエイジ」っていうのは、そんな友だちと出会い、人間としての絆とは何であるのかをいっしょに活動することで自分の身体に刻み込む時間のことを言うのだろうと思う。
 私が藁葺き屋根を踏み抜いたことは、結局、友だちの誰の家でも語られることはなかったようだ。
 いつの間にか廃屋は取り壊され、駐車場になっていた。
 今は、駐車場のコンクリートの隙間からネコジャラシが風を揺らしている光景を眺めつつ、こどもだったころを懐かしく顧みるばかりの大人になっている。

注:ギャングエイジとは
小学生になると子どもたちは急速に仲間意識が発達し、今まで以上に友だちとの関わりを求めたり、遊ぶことに喜びを覚えたり、生きがいを求めるようになる。このグループは家族以上に大きな影響を持つものであり、大人から干渉されない自分たちだけの集団であることを望んでいるとされる。
<特徴>
・友人間で共有する価値観を重視し、徒党を組み、画一的な行動をするようになる。
・集団は5~6名で構成されることが多く、結合性が強く、秘密主義に満ち、外部に対し対立的、閉鎖的に振舞う。
・子どもたち自身の世界の成立を意味し、青年期への準備期間の役割を持つ。

ところが、現代のこどもは、
「ギャングエイジの欠如」が問題とされている。
なぜ、現代のこどもはギャングエイジの時代を思う存分に生きられないのだろうか?
考えてみたという奇特な方は、ぜひお返事を!!
Mail pr_u@seig.ac.jp


●「ギャングエイジ」に興味を持った方へのお薦め図書&映像資料
1.僕らの7日間戦争,宗田 理著,角川文庫,1985(初版).DVDあり。
2.スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編,スティーヴン・キング著,新潮文庫.DVDあり。

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