働くことと生きること。―障害があってもいきいきと働ける機会を作りだす「職業リハビリテーション」の取り組み

「職業リハビリテーション」という言葉を聞いたことがありますか?障害があることで、職業に就くことが困難になっていたり、維持していくことが難しくなっている人にも、職業を通じた社会参加と自己実現、経済的自立の機会を作り出していく取り組みのことです。今回は、主に「職業リハビリテーション」について研究をされている、心理福祉学科の石原まほろ先生に研究や学会内容について教えていただきました。
※学会とは・・・特定の学問分野や専門領域における研究者や専門家が集まり、研究成果や知識を共有、議論する場

「職業リハビリテーション」という言葉を聞いたことがありますか?障害があることで、職業に就くことが困難になっていたり、維持していくことが難しくなっている人にも、職業を通じた社会参加と自己実現、経済的自立の機会を作り出していく取り組みのことです。今回は、主に「職業リハビリテーション」について研究をされている、心理福祉学科の石原まほろ先生に研究や学会内容について教えていただきました。
※学会とは・・・特定の学問分野や専門領域における研究者や専門家が集まり、研究成果や知識を共有、議論する場

石原まほろ准教授

教えて先生!

Q. 心理職として働いていた頃の経験について教えてください。
大学で心理学を学んだ後、現在の独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に入職、20年程、障害者職業カウンセラーや研究員として勤務しました。障害者職業カウンセラーは、職業リハビリテーション(障害者の就労支援)に携わる専門職です。障害のあるご本人はもちろんのこと、障害者とともに働く企業の方や関係機関の方、そしてJEEDの上司や同僚などさまざまな方との素晴らしい出会いに恵まれました。うつ病で休職された方の復職支援では、人生の転機に寄り添う中で、「人はいかにして働き、そして生きていくのか」というテーマに向き合い続けました。こうした経験は、私自身の人生を考える上でも多くの学びをもたらしてくれたかけがえのないものであり、現在でもよく当時のことを懐かしく思い出します。
Q. 取り組んできた研究について教えてください。
働きながら社会人大学院に進学し、職業リハビリテーションに関わる人の職務ストレスと、その対処方法としてのスーパービジョンに着目、具体的内容や両者の関係性について明らかにする研究に取り組みました。障害者職業総合センターでの研究は、「就労支援のためのアセスメントシート」の開発1)、採用後に発達障害が把握された従業員に関する実態調査2)、労働者が障害者とともに働くことに対して肯定的な価値観を持てるようになるまでのプロセスを明らかにする研究3)などに取り組みました。「就労支援のためのアセスメントシート」の普及活動では、全国の支援者の方と交流する機会を得ました。多くの支援者からツールの根底にある理念(「対象者との協同評価」「対象者と環境との相互作用の視点」「対象者のストレングスに着目」)に対する共感を得ることで、研究成果の普及が、職業リハビリテーションサービスの質的向上に寄与できることを実感し、今後の「研究活動を通じた社会貢献」への思いを強める貴重な経験になりました。
1)障害者職業総合センター 調査報告書No.168「就労困難性(職業準備性と就労困難性)の評価に関する調査研究」(2023)
2)障害者職業総合センター 調査報告書No.173「事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究」(2024)
3)障害者職業総合センター 資料シリーズNo.107「障害者が障害のない労働者とともに働く職場環境で醸成される価値と障害者とともに働く労働者の取組に関する研究」(2024)
Q. 学会活動について教えてください。
現在、複数の学会に所属しており、日本リハビリテーション連携科学学会の理事、日本職業リハビリテーション学会の関東ブロック理事、日本公認心理師協会の産業・労働分野委員を務めています。他大学の先生方と学会活動を活性化するための方策などを話し合う機会はとても刺激的ですし、学会活動で得られた最新の知見を聖学院大学での授業に盛り込むなどして役立てることができています。今後も恩返しのつもりで、職業リハビリテーションの更なる発展に向けて私なりの貢献を果たしていきたいと思っています。
Q. 受験生へのメッセージをお願いします。
皆さんは、将来「働く」ことについて考えたことはありますか。私たちが働く理由は、収入を得る、自己実現、社会貢献など人それぞれですが、その意義は障害があっても基本的には同じです。でも、例えば精神障害のある方にとって、病に対する偏見が根強く残っている社会において、働くことは自らの社会的価値を高め、自己の尊厳にもつながる大切な営みになり得ます。障害者が「働く」ための支援について、一緒に学んでみませんか。

将来皆さんが働く職場にも、障害がある方がいるかもしれません。障害のあるなしに関わらず、皆がいきいきと働ける環境や心に関する研究について知ることは、どのような職種であっても役立つことでしょう。