精神保健福祉士を目指す後輩たちへ・・・ソーシャルワーカーとして働く卒業生の話を聴く

心理福祉学科ではキャリア教育の一環として、学生一人一人が日々の学びや経験に自分なりの持ち味を見出して自らの生き方・仕事観に結んでいくキャリア・デザインの一助となるよう、卒業生の話を聴く機会を日頃より設けています。今回「ソーシャルワーク演習C」では、ソーシャルワーカーとして働く卒業生のお二人をゲストスピーカーとしてお招きし、精神保健福祉士を目指す後輩たちへメッセージをいただきました。

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「ソーシャルワーク演習C」
精神障害者の生活や生活上の困難について把握し、精神保健福祉士に求められる相談援助に係る知識と技術について、実践的に習得するとともに、専門的援助技術として概念化し理論化し体系立てていくことができる能力を涵養する。

今だから 伝えられる、後輩へのメッセージ

11月12日(火)、「ソーシャルワーク演習C(精神)」相川クラスにおいて、ソーシャルワーカとして働く卒業生に先輩から、後輩たちに向けたメッセージをいただく機会をもちました。

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ソーシャルワーカーを目指したきっかけ、病院あるいは地域福祉施設において、ソーシャルワーカーとしてどのような仕事をしているのかについて語っていただきました。

PROFILE姫野愛菜さん:2022年度卒業

東松山病院(精神科単科)にて、病院ソーシャルワーカーとして勤務する。在学中はボランティア活動に力を入れ、主に釜石などで活動を行い、さまざまなシンポジウム等にも参加。手話サークル「しゅわっち」代表。ボランティアに勤しむ傍ら、中学時代より病院ソーシャルワーカーになることを夢に描き、社会福祉士・精神保健福祉士の両資格取得し、勉学に励んだ。 

クライエントに寄り添い、支え、未来を一緒に考える

中学2年生の時、友人が精神科に通っていると打ち明けてくれました。その時、自分には何もできず悔しい思いをしたことがきっかけで、精神保健福祉士を目指しました。そして現在精神科病院でソーシャルワーカーとして働いています。

私の仕事は、初診時の相談や入院手続き、退院支援、地域との連携など多岐にわたります。特に「インテーク(初診時の面談)」では、患者さんの主訴やニーズを正確に把握し、適切な支援方法を見極めることが重要です。患者さんが最も困難な状況にいる時に関わるため、相手の話をしっかり「聴く」ことが大切です。

入院中には、一人ひとりのニーズに合わせた心理プログラムや生活訓練を行い、医師や看護師、心理師など他職種と連携して進めます。また、退院後の生活を見据え、地域の事業者や支援機関との調整も行います。忙しい毎日ですが、患者さんが少しずつ前向きになり、自分らしい生活を取り戻していく姿を見られるのは、この仕事ならではのやりがいです。

精神保健福祉士は、クライエントに寄り添い、支え、未来を一緒に考える仕事です。興味を持ったら、ぜひ挑戦してみてください!
 

PROFILE日向弘樹さん:2010年度卒業

社会福祉法人ゆいのもり福祉協会 ゆいのもりつつじが丘にて地域福祉施設ソーシャルワーカーとして勤務、施設長(管理者)を務める
在学中は、バレーボール部部長でも活躍。精神保健福祉士を目指す中で、精神保健福祉教育の必要性を感じ、ゼミの先輩が取り組み始めていた「精神保健福祉教育について考える会 〜 こころの輪 〜(通称:ここわ)」副代表として尽力する。一方、幼少期より病気の両親を支えながら学生時代を過ごすヤングケアラーとしての経験もある。 

悩んだ分だけ成長できる。苦労も多いけど、やりがいだらけの仕事。

中学2年生の時、学校に行かず、一人で福祉住環境コーディネーターの勉強をしていました。おばあちゃんっ子だったことや、母が病気がちだったこともあり、高校では介護学科を選択。最初は高卒で働くつもりでしたが、先生や家族の勧めで大学進学を決意し、聖学院大学で精神保健福祉士を目指しました。認知症やうつ病に興味があったことも、この道を選んだ理由の一つです。

卒業後は就労継続B型事業所で働き、クライエントと共に歩み続ける中で経験を重ねました。その努力が認められ、2016年に施設長となり、現在就労継続支援B型事業所 の管理者として働いています。

ソーシャルワーカーの仕事は、多様で答えが一つではありません。私の場合、最初の職場はパン屋を営む事業所で、早朝からパン作りや販売、顧客対応に追われました。「これがソーシャルワーカーの仕事なのだろうか」と悩むこともありましたが、その中でたくさん悩み、自分なりの意味を見つけてきました。福祉の現場では「待ったなし」の対応が求められます。その場で悩み、考え続けることで成長できます。大変だからこそ、やりがいがある仕事です。
 

二人からのアドバイス

好きな仕事ややりたい仕事だからこそ、思うようにできない自分や、職場での意見の食い違いに悩むことがあります。そんな葛藤や苦しみの中で、涙を流しながら自分と向き合い、「自分が本当にやりたいことは何だろう」と考えるプロセスを通じて、人は成長していきます。このことは、ソーシャルワーカーの仕事に限らず、どんな仕事にも当てはまる大切なことです。

苦労を乗り越えたからこそ伝えたい!学生のうちに身につけておくと良いこと。

一般常識:歴史、経済、政治、マナー、敬語など、企業や外部の人と連携する際に必要な基本的な知識とスキル

地域の特性を知る:自分が働く場所や地域の特徴を理解すること

調べる習慣:分からないことはそのままにせず、すぐに調べて解決するクセをつける

落ち込みを前向きに:落ち込んだときは、その時間を「次に生かすにはどうするか」を考える機会にする

後悔しないための努力:勉強や就職活動、自分の時間をバランスよく大切にし、後悔のない学生生活を送ろう!

受講生からの感想

卒業後の進路として、地域相談員、福祉施設の生活指導員、児童に関わる仕事、行政機関の福祉職、福祉外一般企業、高齢者介護、児童福祉(行政委託地域社会福祉法人)などがあげられました。進路が決まりゆく中、今回の卒業生からのメッセージはとても心に響いたのではないでしょうか。

 

 

・半年後就職するにあたって、予想される苦労をあらかじめ聴くことができたのは貴重な機会だった。
・病院と地域の仕事内容、やりがい、苦労など同時に詳しく聞くことができ、とても参考になった。今、大切にすべきポイントをしっかり覚えて、現場に臨みたい。
・病院と地域のかかわりについての違いなど、改めて実習を振り返る機会になった。
・悩みながら、クライエントにとってよりよい生活になるよう、日々考えて仕事をしているということがよくわかった。自分も同じように悩むと思うが、自分なりに向き合って頑張っていきたい。
・すべて支援してあげるのではなく、一緒に行なっていくことや、できることをつぶさないかかわりが重要であることがわかった。
・自分の足りないところ(一般常識など)に直面し、焦りを感じた。支援者だからこそ身につけてしまう偏見やスティグマがあり、いかにそういう枠にとらわれずに一人一人と向き合っていくかだと感じた。
・社会人になってやりがいを見出せるのだろうか。自分自身がメンタルを壊してしまわないかと不安なことが多いが、今日の苦労話とその乗り越え方を参考にし、社会に出ていきたい。
・社会人になって壁にぶつかっても、落ち込んだり、苦労したことを次に活かしていくということが大事だという話が印象に残った。悩むことはマイナスなことだと思っていたが、成長する上で大事なことなんだと気づいた。

ピアサポートとして

相川先生のご専門は「ピアサポート」。同じ立場の人同士で対話を重ねていくピアサポートは、福祉の現場に限られたものではなく、人生の中で何度も迷い、揺れ動く私たち全てが、当事者であり、経験者であると考えることができる概念で、私たち自身が生きやすくなることにつながります。「友人と愚痴を言い合って、気持ちが楽になった」という感覚は、実は無意識のうちに多くの人が日常生活の中でピアサポートの経験です。

今回の企画は、先輩から後輩へメッセージを伝えるものではありましたが、同じソーシャルワーカーとして働くそれぞれの話を聞くことで、「ピアサポート」の経験のひとつになったのではないでしょうか。

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