現場で活躍するプロフェッショナルから学ぶ

心理福祉学科では、学びの一環として2024年12月4日、「ベテランソーシャルワーカーからのメッセージ2024」と題する講演会を開催しました。講師にお招きした山田龍さんは、精神保健福祉士・社会福祉士としての豊富な経験を持つ現役のソーシャルワーカーであり、けん玉を活用した独自の活動でも注目を集める実践家です。

心理福祉学科教授の田村先生がかつて働いていた精神科病院に、精神保健福祉士の実習生としてやってきた山田さん。講演では、実習中の体験も披露しながら、30年近くなる精神保健福祉士としてのさまざまな職場でのお仕事について紹介され、心の病や障害があっても自分らしく暮らすことのできる社会への熱い思いを聞かせてくださいました。

PROFILE山田龍さん(精神保健福祉士・社会福祉士)

神奈川県出身。精神科病院や地域活動支援センター、神奈川県教育委員会でのスクールソーシャルワーカーなどを経て、現在は「けん玉で遊べる駄菓子屋もしかめや」を運営する就労継続支援B型事業所の施設長。
グローバルけん玉ネットワーク認定「けん玉検定マスター」取得。NHK紅白歌合戦では演歌歌手の三山ひろしさんの後ろで技を見せる「けん玉ヒーローズ」の一員としてギネス更新にも貢献。

多様性が尊重される社会を創る

最初に就職した精神科病院では、退院先がなかなか見つからない患者さんのために、山田さんがアパートの隣の部屋を借りてでも支援しようとしたことや、不登校の子どもと精神疾患のある母親への支援に役所職員といっしょに取り組んだことなど、失敗体験も交えながら話していただきました。学生は、教科書には出てこないようなリアルな現場の話に驚いたり感心したりしながら聞き入りました。

講演の後半では、山田さんがけん玉で遊べる駄菓子屋「もしかめや」を始めた経緯や、けん玉を通じて子どもたちの心を開くかかわりについて語られました。そのきっかけは、スクールソーシャルワーカーとして、引きこもりの児童の家庭に訪問しているときのことだったそうです。
「難しい話は後回しで、まずはけん玉を一緒に楽しむ。それが支援の第一歩になった」との言葉からは、支援の場における信頼関係の築き方のヒントが得られました。

さらに、地域活動支援センターに転職した山田さんは、精神障害のある人たちと共に駅前の花壇の整備作業を行ったり、地域に住む芸術家と一緒に展示会を企画するうちに、住民との交流が広がっていったそうです。そこから「駄菓子屋もしかめや」という就労支援事業所は誕生しました。現在は、障害のある人たちが就労訓練として商品管理や販売を行ない、買いに来る子どもたちや親子連れとけん玉を通した自然な交流が行われています。

 

将来のソーシャルワーカー像を思い描く

精神保健福祉士は、聖学院大学心理福祉学科で養成しているソーシャルワーカーの資格の一つで、精神疾患や障害のある人たちの相談にのり、リハビリテーションや就職に向けた支援のほか、メンタルヘルスに関する普及啓発活動なども行います。精神科病院や地域の福祉事業所をはじめ市役所や教育委員会、一般企業でも働いています。

心理福祉学科では、こうした現場で活躍するプロフェッショナルから学ぶ機会を定期的に提供しており、今学んでいることが将来のキャリアにどう生かされるのかを考えるきっかけにもなっています。

コミュニケーションに苦手意識のある人でも、いつの間にか交流できることを実感する機会となりました。

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