森美術館で2025年1月19日まで開催の「ルイーズ・ブルジョワ展」は、20世紀を代表する最も重要なアーティストの一人であるルイーズ・ブルジョワ(1911年パリ生まれ、2010年ニューヨークにて没)の100点を超える作品群を、3章構成で紹介し、その活動の全貌に迫る国内最大規模の個展です。
11月29日、人文学部欧米文化学科の江崎聡子准教授(専門分野:アメリカ美術、アメリカ視覚文化、ジェンダーとイメージ)が、森美術館で開催されたトークセッション「ルイーズについて語ろう:美術史家編」に出演しました。
六本木ヒルズを象徴する大きな蜘蛛のパブリック・アートは、ルイーズ・ブルジョワの作品《ママン》。蜘蛛はブルジョワの芸術を代表するモチーフとして繰り返し登場してきたとのこと。
江崎先生は、「なぜ大好きな母を蜘蛛にしたのか」を問いとしながら、ルイーズ・ブルジョワの芸術と美術の歴史、「スタイル」や造形への影響を紐解いていきました。ギリシャ神話のアラクネの物語の読みかえについても説明し、神話から美術の歴史、戦争の影響、ブルジョワのキャリアと家族との関係・・・など、一つのスタイルに留まらないことで美術史で語りにくいとされるルイーズ・ブルジョワを考察。ルイーズ・ブルジョワが自身の痛みを表現したとして、蜘蛛は贖罪と救済の形象としてまとめました。
江崎先生、木水先生、キュレーターの椿さん、矢作さんの四人で行われたトークセッションでは、フロアから「ブルジョワが自作品に関して語った言葉や発信はどれだけ戦略的だったのか」など鋭い質問が寄せられ、熱気を帯びた会となりました。
「ルイーズ・ブルジョワの作品スタイルの展開は螺旋状」という江崎先生の言葉が印象的でした!年代順の展示ではない理由もそこにある、とキュレーターの椿さん・矢作さんの解説も貴重でした。
聖学院大学人文学部欧米文化学科准教授。専門分野はアメリカ美術、アメリカ視覚文化、ジェンダーとイメージ。著書に『エドワード・ホッパー作品集』(東京美術、2022年)(単著)、『デリシャス・メトロポリス――ウェイン・ティーボーのデザートと都市景観』(創元社、2024年)(翻訳、解説)、『女性のアーティスト達:日本美術の衝撃』(女性仏教文化史研究センター、中世日本研究所、2005年)(翻訳、リンダ・ノックリン著)などがある。