【報告レポート】2021年度 東北オンラインスタディツアー

報告レポート 東北”オンライン”スタディツアー

2021年9月30日更新

2021年8月27日(金)、28(土)の二日間、東北オンラインスタディーツアーを開催し、学生13名、教職員11名、計24名が参加しました。また今回のツアーには飯能市にある自由の森学園高等学校から生徒6名、教員2名、同法人の女子聖学院高等学校から生徒2名の参加がありました。

聖学院大学では、2011年3月11日に起きた東日本大震災直後より様々な支援活動を行ってきました。学生たちは岩手県釜石市のみなさまを中心に東北で復興に取り組むみなさまと出会い、語り合う中で、沢山の学びと勇気をいただいています。

しかし、2020年以降の世界的な新型コロナウイルス感染症拡大により今回も実際に現地へ足を運ぶことは叶いませんでした。ですが、このプロジェクトを事前から準備してきたプロジェクトリーダーたちは工夫を凝らし、オンラインだからこそできる学びや想いの交流をプログラムに落とし込みました。プロジェクトリーダーの中には東北に行ったことのない学生もいましたが、それぞれがそれぞれに東北へ思いを寄せており、それが形となり、未来への指針となる学び多き二日間でした。


 「私たちが見た"東日本大震災"」

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祖母が岩手県釜石市にいる人文学部児童学科2年の菊池さんと、親戚が宮城県女川町にいる人文学部児童学科2年の中尾さんに、それぞれの見てきた東日本大震災について語ってもらう時間です。当時小学生だった二人ですが、大切な故郷である釜石と女川が震災後大きく変化してきたこと、それについて思うことをご家族との大切な思い出と共に話してくれました。


「私たちが伝えたい"東北の魅力"」

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菊池さんは釜石について、中尾さんは女川と石巻について、Googlemapや写真、時には現物を駆使し、二人の感じる魅力について語ってもらいました。瓶詰のウニ、乾燥ホヤ、海鮮ラーメン、かまぼこ、さんまパン・・・。「被災地としてだけではなく、魅力あふれる土地としての東北を知ってほしい。」と二人の愛が溢れる発表に、参加者のみなさんは現地に行けないもどかしさを強く感じる時間となりました。


映像による震災学習

2日目にお話を伺う佐藤敏郎先生と佐野里奈さんに関連した映像を中心に、東日本大震災への理解を深めました。


小さな命の意味を考える会代表の佐藤敏郎先生のお話

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宮城県石巻市立旧大川小学校では、津波で児童74名、教職員10名が犠牲となりました。娘さんを亡くされ、現在は語り部として活動されている佐藤先生に、震災遺構となった旧大川小校舎を案内いただきながらお話を伺いました。

まずは、献花台の前で手を合わせます。佐藤先生は一か所一か所、震災前の様子を切り取った何枚もの写真と共に説明してくださいました。「ここには、まちが、生活が、命があり、こどもたちがいて、みんなに愛された学校だった。みなさんの町と一緒。特別な場所ではなかった。それを突然変えてしまうのが災害だ。」と。

当時佐藤先生は女川町で中学校教師をされていて、家族と会えたのは震災から2日後の3月13日、そして、娘さんと対面できたのは14日でした。「知っているこどもたちがみんなブルーシートに寝かされていた、その光景は忘れられないし、忘れてはいけないのだと思う。」「語り部をやっているが、どんな言葉で話していいか分からない。その分からなさこそ向き合うことなのか、とも思う。」と、沢山の葛藤と痛み、心の内を話してくださいました。

最後、学生からの質問に答えてくだいました。「10年間先生を突き動かしてきた原動力は?」という質問に、「後悔したくない。おかしいと思った時には声をあげることを、大川小の卒業生たちから教えてもらった。過去は過ぎるけど消えない。時間は積み重なる。あの体験をここで話すことで、みなさんの血肉になればいい。」と答えてくださいました。


学生交流会

お昼を食べながら学生同士の交流会をしました。自由の森学園の高校生にも参加してもらい、普段の交わりの枠を超えて、お互いの共通点やコロナ禍の生活の悩みについて話し、一息をつく時間となりました。


佐野里奈さんのお話

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プロジェクトリーダーからの「同世代の人にお話を聞こう」という提案により、震災当時、岩手県釜石市立鵜住居小学校4年生だった岩手大学3年の佐野里奈さんに、対談形式でお話を伺いました。佐野さんは高校生の時、母校の小学校で自身の津波から避難した経験をもとに仲間と作成した紙芝居による防災プログラムに取り組まれた経験があります。佐野さんの通っていた小学校では『津波てんでんこ』について総合の授業で時間をかけて学んでいました。『津波てんでんこ』とは、「津波がきたら家族や友人も逃げていることを信じて、てんでんばらばらに逃げろ」、という地域に伝わる災害時の標語です。災害当日と同じ様な避難訓練をし、第一避難場所から第二、第三避難場所まで、児童一人ひとりが把握していたため臨機応変に対応できた、とのことでした。「兄が隣で手をつないで一緒に避難してくれたことも自分が避難できた要因のひとつ。」と、とてつもない心細さと共にあった被災した当時の状況を詳細に語ってくださいました。

2018年に佐野さんが母校で行った紙芝居は、あえて津波の生々しい表現を使わず、色や表情を工夫して恐怖心を煽らないようにしています。自身も防災教室の活動に取り組む山下さんから「どういう気持ちで防災プログラムをやっているのか?」と質問があり、「今の小学生は震災の頃赤ん坊で、知らないことも多い。知識としても、伝えていかなくてはいけないと思っているから。」と答えてくださいました。また、佐藤先生のお話を受けて、「自分より辛い経験をしている人がたくさんいる。当たり前は当たり前じゃなく、誰かがつくっている。感謝して大切に生きること。」と、震災を経験したから感じている今の気持ちも語ってくださり、参加者の胸に響く時間でした。


振り返りの会

①ツアーを通じて感じたこと・気づいたこと・気持ちの変化、②ツアーで学んだことを受けて、今後自分が取り組みたいこと、の2つについて、グループに分かれ話し合いました。自分の感じていることを素直に話し、相手の意見を否定・批判しないことがルールです。少人数で40分間しっかりと話し、全体で各班のファシリテーターが発表をしました。

「ツアーに何度も参加している人もいるが、何度も思い出して、振り返らなくてはいけない。足元の視点を忘れない。風化させないために常に考え続けることを大事にしたい。」、「当たり前のことについて考えること。復興できているのは佐藤さんたちの粘り強さに起因している。後悔したくないという気持ちを行動に移すことの強さを自分たちも見習わなくてはいけない。行動に移すまでして、このツアーに参加した意味があったといえるのではないか。」など、日々の防災の重要性を再確認し、今回の学びを未来の命につなげていくことをそれぞれに決意し合う時間となりました。

参加者の感想

  • この会で得た熱をすぐに、今日にでも行動に移します。
  • 避難場所の確認や避難の準備など、ある程度はできているつもりですが、今一度、家族と振り返って防災対策を取り組みたいと思います。また、このツアーでの経験を知人へと共有し広げようと思います。
  • 東日本大震災から10年が経って少し忘れてきてしまっている人にもっと地震の怖さや日々の意識を変えて欲しいと思ったので、今回のこのツアーのことをたくさんの友達に伝えたいと思いました。

※学校法人聖学院はグローバル・コンパクトに署名・加入、SDGsを目指した活動を行っています。

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