【学長メッセージ】聖学院大学の新入生、在学生へ ー新型コロナウイルスに抗してー

学長メッセージ

みなさまの自重を求めます

2020年4月1日
聖学院大学 学長 清水正之

 本年1月以来の新型コロナウイルス(COVID-19)感染者の拡大の状況をうけ、聖学院大学でも卒業式、入学式を中止としました。また新学期の授業も5月連休過ぎに開始することとしました。連日のように政府また自治体から、不要不急の外出を控えるようという強い要請が出されています。みなさんは「自粛」「自重」という言葉や雰囲気に、息苦しさを感じたり、不安やストレスを抱いていることでしょう。社会への同調圧力にほかならないという批判的声も時に聞こえます。しかし聖学院大学もまた学生のみなさんに、あらためて行動を自重されることを強く要望します。

 新型コロナウイルスの感染拡大が始まった初期から、体力のある若い世代は、仮に感染しても無症状か軽症で終わるという見方をテレビやネットで見たり、あるいは新聞や雑誌で読んだりしているでしょう。感染拡大は他人事と感じている方もいるのではないかと思います。

 しかし世界保健機関(WHO)は繰り返し、年齢が低い者にも症状が強く出ることはあることに注意を喚起しています。一定の割合で重症化するともされています。海外では20代以下の死者がでています。3月31日に、ベルギーで12歳の少女が死亡したこと、欧米での深刻化した例が報道されました。やはり31日の日経新聞報道は、米疾病対策センター(CDC)の分析として「若年層の重症化リスク」が報告されたとしています。同日には、中国武漢での知見として、高齢者と若年層の死者の割合についてそれほど有意の差があるとはいえない、という記事が出ました。

 これらの事実が示すものは、問題があなた自身のことに限らないということです。事柄は疫学あるいは公衆衛生といった社会的領域に関わります。厚労省のホームページ「新型コロナウイルスに関するQ&A※1」によると無症状病原体保持者(症状がないがPCR検査が陽性の者)から感染するかというQがあります。答えでは、「症状がもっとも強く表れる時期」に他者へウイルスを「感染させる可能性も最も高くなる」ので無症状者からの感染の可能性は低いとしています。ただし答えには「ウイルスが活発な働きをしていないときには」という限定がついていることに注意しましょう。この箇所で参照された米疾病対策センター(CDC)の文書では、すでにいくつか無症状で感染元となった例があると明記されています。その後3月末には中国で無症状患者からの感染例が確認されるなど、その例は各国で相次いで挙げられています。

 今後のこのウイルス感染の展開は学生のみなさんにも容易に想像がつくでしょう。一つ目は特効薬が見つかること、二つ目は罹患者が60、70%に達してこのウイルスに対する免疫が人間にでき、徐々に脅威が減ること、そして三つ目は最善の治療法が見つかることです。ワクチンの完成には1年程かかると専門家は予想しています。治療法の確立が一番早い道と思われますが、いずれにしても長期の対策が必要となります。

 問題はその終局が来るまでのことです。私たちにできることとしては、既成の治療で最善を尽くしつつ、急速な感染者増大のピークをできるだけ抑え、かつピークに達するまでの時間を先に先に延ばすという対策しか今はありません。そのために自らの感染を避け、自分が引き起こす二次感染・三次感染を出来る限り避けることが重要となります。

 3月19日に公表された専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」では、私たちの対策として「三つの条件」を挙げています。①換気の悪い密閉空間②人が密集している③近距離(密接した距離)で会話や発声が行われる、という三つの条件が全部当てはまる場を避けることが指摘されています。

 イタリア、フランス、スペインの例を思い起こしてください。急速な感染拡大により死者数も拡大をしていますが、それ以上に深刻なことは、医療の現場の崩壊です。医療関係者の罹患、病床や治療器具(人工呼吸器)の不足等を諸外国では招いています。折しもニューヨークで公園に罹患者の治療施設としてテントの設置が報道されました。病院が受け入れることができなくなり、救える人にさえ治療を施すことができなくなるのです。

 以上からもおわかりのように、あなたの行動がもたらす結果が、あなた一人のことに限らないということです。若いあなたたちが、症状が強く出ないが感染した状態で活発に動き回ることは、本人が気付かぬ内に感染を広め、より高いリスクをもつ他の人々(基礎疾患がある、糖尿病がある、高齢者であるなどの人々)に伝染させる可能性が極めて高くなるのです。爆発的患者急増(オーバーシュート)の危険を高めるのです。

 「三つの条件」を吟味し、感染リスクを高める行動を今は慎むように強く願う次第です。
これは社会の持続のための対策です。一つの行動が、人間の社会の必死の努力に背を向けることになりかねないのです。聖学院大学はSDGsの宣言の趣旨に賛同し、その運動の一翼を担っています。SDGsの宣言の趣旨は、「持続的な人間的な豊かさの達成」です。その実現のためには「誰一人取り残さない」という姿勢が求められています。感染のさらなる拡大は、医療の現場の崩壊をもたらし、手厚い治療を受けるべき人が受けられない状態に放置されるという事態が起こるのです。

 聖学院大学のスクールモットーの一つ「良き隣人となる」を覚えてください。自重すること自粛することが今は私たちのできる「愛の行為」であることを。一人一人が今すぐできる身近な対策をとってください。
手洗いを励行する、規則正しい生活を維持し自らの免疫力を高めておくなど、日常的な対応も必要です。人間に与えられた叡智は必ずやこの難局を打開できるでしょう。

(※1:"新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)"厚生労働省. 令和2年3月31日時点版    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html)

 

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