ミュージシャン・スネオヘアーだけでなく、
人間・渡辺健二の原点は、
聖学院大学の4年間に集約されています。
2007-04-06 Close Up No.28
ミュージシャン スネオヘアー氏



スネオヘアー(本名:渡辺健二)

1971年生まれ。新潟県長岡市出身。
聖学院大学人文学部欧米文化学科一期生。
小学校から、エレキギター、キーボードと音楽に親しみ、高校時代はバンド活動。大学時代は音楽活動をせずに、演劇を志す。
1999年、初ライブ、「SUN!NEO!AIR」でインディーズデビュー。
2002年、「アイボリー」でメジャーデビュー。 『ハチミツとクローバー』など、TV番組や映画のテーマ音楽を担当。
2007年、1/24、13枚目のシングル「やさしいうた」、2/21、4枚目のアルバム「スカート」をリリース。
公式ホームページ:http://www.suneohair.com/


何も考えずに大学に入学した子供のような意識から、大学の4年間で多くの友達を得ることができ、様々な体験を積み重ねることができた。
この4年間、いま振り返れば、たいしたことをしていなかったかもしれないけど、考え、学び、感じ、出会い、悩みながら成長し、入ったときとはまったく別な思いを抱き、社会に出ていきました。
自分の音楽の原点は、大学時代にあると思っています。
自分の詩(うた)や曲が、聴き手の人たちの何かの想いへのキーとなり、誰かの心に響いて気持ちも揺り動かす、そんな存在になれたらいいなと思います。



――スネオヘアーさんの音楽との関わりあいは?

小学校の時に両親にエレキギターを買ってもらい、中学ではお小遣いでキーボードを購入し、より音楽を楽しむようになりました。両親が音楽関係の仕事をしているわけでもなく、普通の家庭で、たまたま兄も僕もリスナーとして音楽が好きだった、という感じですかね。高校時代にバンド活動をしていましたが、プロのミュージシャンに憧れるなどの夢はなく、そのときが楽しければいいというクラブ活動の趣味の範囲でしたね。小学校のときは歌謡曲全盛の時代でしたから、いま思えばメロディアスな曲で自然と育ったかなとは思っています。



――大学進学にあたって、大学で学びたいことや将来のことを考えていましたか?


まったくノープランで、ビジョンも何もない曖昧模糊とした思いしかない学生でしたね。まず一人暮らしがしたかったし、大学の4年間という時間と空間で自分を見つけよう、何かを探そうというスタンスでした。漠然と、世界を広げたい、たくさんの友達を作りたい、それが自分の財産になるだろうと思ってました。卒業して年が経つにつれて、多くの友人と出会えたことが確実に自分の人生の糧になっていると、徐々に思えるようになってきましたね。



――どのようなキャンパスライフを過ごされたのですか?

高い授業料を支払うのですから、本来はきちんと授業にでなくてはいけないんですが、あんまり真面目な学生ではなかったことは確かですね(笑)。よく図書館にこもっていました。当時、どのような本を読んでいたか記憶に残っていないんですが、一度、図書館の小冊子に一文を掲載されたことがあり、友達からは、「何でお前がこんなの書いてるの」なんて、からかわれたりしました(笑)。本は好きでしたね。小さい時から表現することに興味がありましたが、自分が手を伸ばしてカルチャーに触れるというよりは、知識を吸収するのに本が一番近かったんでしょうね。



――大学の授業で一番、印象的なのは何ですか?

担任のバートン・ルイス先生ですね。非常にユニークな方で、授業内容に興味を持てない学生の気持ちを引きつける魅力を持った先生でした。知的好奇心を刺激するとでもいうのかな、先生のお話はとても印象に残っていますね。ただ、途中で体を悪くされて、卒業時には在籍されていなかったことが残念でした。
人文学部欧米文化学科は新設の学部学科で、自分たちが一期生。先輩からのプレッシャーもなく、自由な学生生活を送れることができました。少人数でしたし、同期のつながりは強かったと思います。人文学系だと、クリエイティブな仕事にチャレンジする人間が多いんですが、表現したいと夢を持って挑戦する人は、当時、自分一人。周りの連中はけっこう面白がってくれましたね。後から、同期の丸山タケシ(児童学科)くんが、コラムリストになっていること知り、一度、テレビ局で偶然出会ったことがあります。彼も同じグループの一人でした。



――最新のシングルのジャケットは、昨年、大学で撮影されたとおうかがいしましたが。


シングル『やさしいうた』

ESCL-2927/シングル/2007.1.24/\1,223(税込)

詳しい情報はスネオヘアー公式サイト・ディスコグラフィーページをご覧ください。

1/24にリリースされた『やさしいうた』のコンセプトが二十歳の頃、シチュエーションやシーンなど学生時代が大きく関わってくるので、大学当時の写真と現在の写真を組み合わせて作りました。一緒に映っている友人は音楽とはぜんぜん関係ない仕事についているので、どう使われるかよく理解できなかったみたいですが、喜んで協力してくれました。
卒業以来、初めて大学に行き、ずいぶんと変貌しているのでびっくりしました。1時間くらいかな、学校にいたのは。ふだん思い起こすこともなかった学校の風景。でも、ウソみたいに時間が経ったことが感じられなかった。友達と別れた後も、また明日1時限目にフランス語があってみんなに会う、みたいな感じがしました。時が止まっている、とでもいうのか。大学を出るときに、何かを表現したいという気持ちのままに走ってきて、そしてそれが現在、少しは成しえている。止まっている感覚は、自分の人生のなかでいい意味にとらえることができましたね。



――何かを表現する、それが音楽活動に繋がったのでしょうか。

実は、大学では音楽活動はまったくしていなかったんですよ。表現したいと思ったきっかけは、3年生のときに映画や芝居好きの友人から演劇の情報を紹介されてからですね。芝居にはまって、役者で生計を立てたいと志すようになりました。



――就職しなかったことに、不安はありませんでしたか?

実力をつけるまでが大変。実力があっても見い出されるまでが大変。思い切ったことをしているなぁという葛藤があり、人とは逆行しているようでとても不安でした。周りの友達は卒業して、なんらかの組織に入っていったり、あるいは家庭をもうけたりと築きあげているものがあるのに、自分には何もない。猛烈なプレッシャーでしたね。反面、学生時代の記憶や思い出、それに友人たちがどんどんやれと、応援してくれるのでそれが励みになり、信じてやってくることができました。大学時代に蓄積したすべてのものが自分の財産になっていると思っています。



――演劇から音楽へはどのように変遷していったのですか?

生活するのにアルバイトをしなければいけないのに、劇団活動など様々な理由で長続きがしない。そこで、もともと好きだった音楽ならば続くだろうと、音楽関連の仕事をすることにしたんです。裏方の仕事などで現場に触れているうちに、忘れていた音楽への気持ちが高まってきて、演奏者として自分がトップに立ちたいと考え始め裏方の仕事を辞めて、それから音楽一筋で今まで頑張ってきました。



――スネオヘアーの音楽に大学時代や役者の時期の影響はありますか?

大学は、現在の自分を形成した価値ある4年間でしたね。モラトリアムの1つとして、故郷・新潟の山や海の風景は存在しますが、20歳ころの繊細な感受性で様々なものを吸収できたこの4年間は、自分の原点であり、原風景といえますね。初めて上京して川越での一人暮らしや友達、出会った女の子、自分のなかに流れているシーンなりシチュエーションはすべて思い出であり、何らかの詩やメロディに彩られていると思います。
一人暮らしを始めたとき、実家の長岡と違い深夜番組がたくさんあるので、テレビ三昧だったんですが、すぐに壊れてしまって、そのときからテレビなしの生活が始まりました。友達と過ごせた学生時代はともかく、孤独なアルバイト生活のときはすべてのものごとが音楽を介しての状態となっていて、社会と自分を結びつけているのは音楽だけ。表現することに意欲を燃やしていた時代の向上心と不安、そしてそのバックに流れている音楽、そのときの経験や思いは今でも大切にしています。ふとした景色や感じた思いが、自分のなかにピクチャーのように残っていて、日常の積み重ねから詩や曲が浮かび上がってきます。それをモチーフに1つの作品として形作られるので、振り返ることのできる感覚はこれからも大事にしていきたいですね。



――2/21リリースのニューアルバム『スカート』で、注目して欲しいところはありますか?


アルバム『スカート』

ESCL-2933/アルバム/2007.2.21/\3,059(税込)

詳しい情報はスネオヘアー公式サイト・ディスコグラフィーページをご覧ください。

当時の7号館の周辺はまだ整備されていなくて、後ろは雑木林で覆われていました。本当は駐車禁止だったんですが、そこに車を停めているときによく流れていた曲があって、その曲を聴くと雑木林のミストというか霞んでいる感じや土の匂いや葉の香りが一気に蘇る、当時の季節感や思いがばぁーと胸一杯になる、自分にとってのキーとなる曲があります。自分の曲も、誰かにとってある時代の思いに繋がる曲になってほしいと思います。“今”聴いている自分の歌が“今”だけではなく、遠い将来でも、そのときの“今”を蘇らせることができれば、素晴らしいことではないでしょうか。このアルバムの曲が、そんな存在になれば嬉しいですね。



――今後の活動はどのように考えていますか。音楽以外のジャンルに進出する予定はありますか?

まずは、音楽を中心ですね。いい曲、いいメロディをたくさん書いていきたいし、ライブで何かを伝えていきたいと思っています。音楽以外に求められていることで、そこに自分に必要性があって無理がない形であれば挑戦はしていきたいですが、今は音楽が中心です。いい作品ができても、いつも満たされないものがあります。もっとクリエイティブになりたいし、歌もうまくなりたいし、いろいろと感じられる人間でありたいし、人間的に学んでいきたいと思っています。



――ツアーが始まりますが、抱負をお聞かせください。

楽しいライブにしたいと思います。内容や演出などはこれから企画する段階ですが、ストレートに自分の気持ちを歌っていきたいですね。自分の気持ちをメッセージするよりも、聴き手の方に何かを感じて欲しいし、それぞれのメッセージを作るきっかけとなる場になれればいいですね。ライブ後に、なによりも幸せ感というか、ポジティブな気持ちがこみあげてくれればいいなぁと思っています。 (2007年2月取材)