2014年度秋期 聖学院大学サテライト講座@大宮(報告)

2014年10月から12月に開催いたしました、「聖学院大学サテライト講座@大宮」を報告します。

今回の聖学院大学のサテライト講座テーマは「これからの学校」

2014年5月より姜尚中学長就任にともない開講した、聖学院大学「サテライト講座」。
第2期を2014年10月~12月に、5回にわたって、大宮ソニックシティにて行いました。
今期のテーマ「これからの学校」のもとに、各界で活躍する方々を講師としてお迎えし、教育のあり方や、子どもたちと教師の関係、またメンタル・ヘルスからの観点など、教育現場が抱える問題を取りあげ、白熱した講義が繰り広げられました。各回で多くの方にご参加をいただきましたが、特に第1、2、5回は150名を超える参加者数となりました。


●各回講師
 第1回 講師(10月14日):田中 優子(法政大学総長) 
 第2回 講師(11月10日):香山 リカ(精神科医、立教大学現代心理学部教授)
 第3回 講師(11月28日):小川 洋(聖学院大学教授/教育学) 
 第4回 講師(12月5日):田村 綾子(聖学院大学人間福祉学部准教授、公益社団法人日本精神保健福祉士協会副会長)
 第5回 講師(12月9日):尾木 直樹(法政大学教職課程センター長 教授)

※講師詳細、詳しいプログラムはこちら >>>


 


 各回講座内容

第1回(10月14日)初回の講師として対談した田中優子総長は、自分で考えて動ける人間を大学は作っていくことが重要だと言及、これからの大学像について話されました。また、ご専門でもある江戸時代の生活文化の一つである寺子屋について話され、その学びの形態が個人授業であったことを紹介。姜学長と共に、インターネットでの授業や大学の教室作りなどを取り上げながら、現代的に寺子屋を蘇生させる道を探りました。

第2回(11月10日)に登場した香山リカ氏は、教育現場で多くなったメンタルについての話題を挙げました。こうした子どもたちが抱える問題のケアについて触れつつ、学校や病院、また関係各機関との連携プレーの必要性について語られました。
また、明日は効果が出ないが時間をおいて効力を発揮し、子どもたちの生きる力になるのが学校教育だといった、学校の役目についても語る熱い講義となりました。

第3回(11月28日)は、聖学院大学教員で、教育学専門の小川洋教授が対談者でした。小川先生は高校の教員として務められた経験を基に、30数年の中等教育および高校・大学入試と「これまでの高校」を俯瞰しました。また対談では、海外の教育事情との比較も交えながら、日本の中等教育、高校・大学入試制度に対して、鋭い問題提起をされました。参加者の高校の先生からは、進学実績等の成果が問われる現場など、様々な課題があるなかでの「これからの高校」のあるべき形を問う、活発な質問、意見が投げかけられました。また姜学長からは、教育の悩みを共有しあう場など、教員同士の横の連携の提案がありました。


第4回(12月5日)田村綾子教授准教授は、実際の事例を交えながら、メンタルヘルスや教育を通して学生の福祉のこころを育むことについて考えました。弱者や障害を持った人を隠すような社会になっているのではないか、という姜学長の問いかけに対し、田村教授は、実態を知らず自分と違う人と思ってしまっていることが一番の問題だと話され、学校教育のなかで施設などを訪れ、かかわり方を学ぶことが重要だと語りました。また、目の前の人にどう言葉をかけるかという具体的な学習とともに、苦しむ人を生み出す社会構造にも目を向けるという2つの視点を育てることの重要性も指摘されました。


第5回(12月9日)最終回の講師である尾木直樹氏は、いじめや成果主義、また奨学金ローンやセクシャリティなど子どもたちが直面している多くの問題に触れながら、姜学長との対談を進めました。
尾木氏は小学校の1学級が36人ならば、36通りの考え方・命があり、子どもたちそれぞれを尊重しなければならない、教育は子どもが主人公だ、という力強いメッセージを会場に送りました。


毎回講座の最後に行われる質疑応答では、姜尚中学長、ゲストそして参加者の間で活発な応答が見られました

 

 

参加者の声

【10月14日 感想】


グローバル化から、日本、大学へと、内容もとてもききやすいものでした。田中先生のはっきりとした口調、内容、全て実感をもって考えることができました。高校の教育現場でも考えることの必要性を改めて感じました。明日からの授業で実践します。又、当校は通信制のため、「考える」授業を多く実施するカリキュラムの余裕があります。進むべき道に自信がもてました。(高校教員、50代)

大学そのものの教育のお話が伺えてよかった。お二人の先生が、教育する立場だけでなく、経営的なこともすべて考慮してお話なさったことも新鮮であった。(高校教員、50代)

大学は地域の財産としてこれからも考える場を、これからの若者にも、また、一度社会に出た人にも提供して頂けるよう大事に育てていただきたいと思いました。(一般、40代)

大学の長としての立場からのお話、大変興味深く聞かせていただきました。偏差値やランキングで選ぶのではなく、個性と己の適性で選ぶというのは新しい視点でした。(学生、10代)

 

【11月10日 感想】


姜先生、香山先生の本を、学生時代に読ませて頂いて、時間をかける、その人のペースを考える様な価値観の根本を作って頂いたと思っています。しかし、現場に出ると、「1日でも欠席すると留年!」という毎日を戦っている状況です。教師としては、急かせなくてはならず、けれど、その子の人生を見ると、“今その課題ではないのかも”と思う自分もいます。そういう時、自分の無力を感じる日々です。今日お話を聞いて、少し、まったり、客観的に見る自分を大切にしようと思いました。(高校教員、20代)

子どもの問題を誰が(学校なのか?医療なのか?福祉なのか?etc)中心になってケアしていくか、ひきうけていくかの難しさは心にひびきました。(本当に理想的なのは、関係者がチームとなって協力・連携することだと痛感します)(スクールカウンセラー、40代)

平易な語り口で心理学的なお話をいただけてよかったと感じています。子供たちの中には、その家庭内で子供の心地よい場所がない子供が多くいるのではないだろうかと感じています。学校ではない、塾でない、自由な集いの場・かかわりが必要なのだろうと思います。(一般、70代)

「評価軸がたくさんある方が良い」「人生の複線化」この言葉が心に残りました。子供も教師も点数で評価され、何に向かって走らされているのか?小学校教員ですが、毎日忙しくて、目の前の仕事に追われ疲れ切って、いつまで体がもつのか不安です。「あなたが生きていることがすばらしい」と子供に伝え、日々の小さな事に喜びを共に見い出していける教室を作っていきたいと思いを新たにしました。(小学校教員、50代)

姜先生の「ランキングそれが何なんだろう」という言葉、力強く受けとめました。香山先生の、「学校教育が後からじわじわ効く」というのもうれしい言葉です。先生方の真心が伝わる学生達が育ちますよう、祈っております。本日はありがとうございました。(一般、50代)

 

【11月28日 感想】


最後の質疑応答から、一教員として横の繋がり、チームワークが大切だということを学びました。結論を導くことが非常に難しいんですね。何かをこうと言い切ることの危険性や恐怖感を最後の質疑応答から感じました。
(高校教員、30代)

「横のつながりこそが対抗軸」という指摘ですが、新自由主義的競争原理、自己責任論の浸透には未だ勝てない。社会や生活、そして人々の意識の中に深くしみついてしまった。(高校教員、50代)

 


【12月5日 感想】


インクルーシブ教育と言われて少しずつですが、開かれた教育を目指す方向に向かっているとは思います。学校の閉鎖性を少しずつでも取り去るためには、外からの空気をもっととり入れていく必要があると思います。学校だけで子どもたちをかかえこまず、もっと外部の人たちの助けが必要だと思います。(教員、50代)

精神疾患、特に10代で発病してしまうと、一番色々な事を吸収できる時期を失ってしまう。それからの人生も大きく、いわゆるレールからはずれてしまうと本人も両親も思ってしまう。相談できる場所、人、機会も与えられないと、人との係わりも出来なくなってしまう。スティグマも強く、なかなか難しい問題ではあるけれども、病気になってしまった自分そのものを社会的に認めてもらい、存在意識を見出すきっかけを作る事が大切だと思う。(一般、50代)

精神保健について、市民の方へ分かり易く説明を工夫されていた田村先生、ありがとうございました。私も精神保健福祉士として近隣、近所の方へ分かり易く語るのにとても参考になりました。目の前の相談に追われている毎日ですが、振り返るよい機会を頂きました。精神保健福祉士、社会福祉士として現場で働いている人に対してのリカレント教育もぜひ充実してください。よろしくお願いします。(公務員、40代)

 

【12月9日 感想】


これからの学校教育について、大切な方向性を示してくださいました。すぐにでも現場に取り入れたいことがいくつかありました。大切なのは「生徒の人格」をしっかり認めていくこと、対応していくことだと思います。聖学院大学の教職課程はそれを大切にしてほしいです。(50代、高校教員)


多様性を認め合うことは大事であるが、そのためには何が必要なのか悩みは尽きない。しかしながら、取り組み続けようというパワーをいただけたと思います。また、全講座を通して「自治」について今後考えて行こうと思います。(30代、高校教員)


本当に具体的で分かりやすいお話をありがとうございました。教育はとても大切な問題です。専門家の方とのお話、このひとりひとり多岐に渡る問題を知っていき、解決策を少しでも知ることで現在の教育の難しさ、圧迫感に少しでも風穴が開く様な気がします。一番の困難は国の教育の政策だと思いますが…。(一般、60代女性)


初めて参加させていただきました。とてもよいお話でした。いじめのお話、教員の現状やあり方がよくわかりました。家に帰って家族に伝え、分かち合いと思います。(40代、元小学校教員)


インターネットラジオPODCASTでサテライト講座・大宮を配信

ラジオ番組「PEOPLE姜尚中 多士済々~悩みの海を漕ぎ渡れ~」

秋期サテライト講座・大宮の第1回「姜尚中×田中優子」、第3回「姜尚中×小川洋」、第5回「姜尚中×尾木直樹」の対談の様子がインターネット上でラジオが聞けるPODCASTでお楽しみいただけます。下記より聞き下さい。

ラジオ番組 多士済々~悩みの海を漕ぎ渡れ~
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※FMラジオ番組JFN「PEOPLE多士済々~悩みの海を漕ぎ渡れ~」は、姜尚中学長がパーソナリティを務めるラジオ番組。(全国FM30局のみで放送されています)


 


 

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