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サンタクロースがやってくる
サンタクロースがやってくる

 サンタクロースはクリスマスには欠かせない人気者である。誰もがサンタクロースからの何か特別なプレゼントをもらうことを願い、うきうきとするのである。

 しかし、サンタクロース自体、聖書に根拠があるわけでもなんでもない。むしろ教会の歴史のなかではサンタクロースを偶像として排斥しようとした時期があるほどだ。しかし、そうした迫害にも負けず、ますますその存在感を増してきている。なぜなら、サンタクロースの存在自体に、理屈抜きで魅力のある要素が盛り込まれているからだ。

 それは、神学者の賀来周一氏によれば、サンタクロースはイエス・キリストの代理であり、それがサンタクロースに引き継がれたことで、宗教臭さを感じさせることなく、人間の根源的な問題に触れることとなっているからだ、というのである。

 そう言われてみると、人は人生のいろいろなときに、神さまや運命や人生から、特別なプレゼントをもらうことを求めていると言えるであろう。それは金品ということに限らず、それまでの生活をリフレッシュし、新しい気持ちで生きていくきっかけのような無形なものをも含めて、特別なプレゼントをもらうことを求めているのだ。

 神さまからの特別なプレゼントをもらうためには、サンタもそうであるし、子供たちもそうであるように、夜になるのを待たなければならない。象徴的にいえば、自分が光(理想)のただ中にいるのではなく、現実の制約や無力さに苦心し、暗闇の中にいることを自覚し、認めたときに、サンタはその人のもとにやってくるのである。だから、自信満々で順風満帆の人にはサンタはなかなかやってこない。むしろ挫折に苦しむ人の元に、折々にやってきてくれるのである。

 それも、プレゼントの届き方に決まったパターンがない。煙突から入ることは知られているが、その入り方は謎であるし、煙突がない家屋にもまったく支障なく入ってくる。そこには個々の家屋の持つ構造の違い(もっといえば個々の人間の心の構造の違い)を尊重し、個々にユニークに対応する神さまの知恵がうかがえる。

 もし、未来に希望が持てず、うつうつとクリスマスの季節を迎えている人がいたとしたら、神さまからの特別なプレゼントをもらうチャンスであるかもしれない。それもそのプレゼントは思いも知れないユニークな方法やタイミングでやってくるかもしれないのである。

 繰り返しになるが、サンタクロースは、昼間にやってこない。夜にやってくる。それも、光り輝く姿ではやってこない。暗闇に紛れてこっそりやってくるのである。それも一軒一軒家屋の構造にあわせて、入り方を工夫してやってくるのである。

(by けい)

(推薦文献)
「サンタクロースの謎」(賀来周一著、キリスト新聞社)

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