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家族の力
家族の力

 今年の夏はどのように過ごされただろうか。夏休みということで、離れて住む家族や親族に久しぶりに会った方もいることだろう。

 先日、テレビ映画で、アニメ「サマーウォーズ」(二〇〇九年、日本)を観た。主人公の健二は、数学が得意だが、気弱な高校二年生で、あこがれの先輩・夏希に頼まれ、夏休みの間、長野にある彼女の実家で過ごすことになる。そこで健二は、ユニークな大家族に取り囲まれながら貴重な四日間の生活を始めるのであった。

 ちょうど、そんな時、ネット上の仮想空間で事件が起き、健二や夏希の一家がそれに巻き込まれていく。田舎の大家屋や地元の人びとののどかな暮らしぶりの描写と、ネットの中でゲームのように展開していく大事件の様子との対照がおもしろい。たとえ環境や技術が変化しようとも、人や家族のあり方の基本は変わらないのだということを、この作品は伝えているのだと思う。

 さて、健二も利用していたネット上の仮想空間では、人工知能が暴走し、その得体の知れぬ敵が、仮想空間だけでなく現実世界をも支配しようとしていた。健二は、夏希や親類の男の子の協力を得ながら、その敵と仮想空間で戦うことになる。しかし、大事なときにかぎって、状況を理解していない他の家族たちの(悪意はないのだが)邪魔に足をすくわれ、大変な目にあう。

 しかし、逆に、家族の力に助けられることも多々あった。頼りのない伯父さんがここぞというところでネット上に加勢に現れたりするし、最後の戦いでは、決め手となるのがお婆ちゃんの好きだった「花札」だったりするのである。そこには、問題を起こすのも、問題を乗り越えていくのも家族であり、(はたから見ると合理的ではないものであっても)その家族特有の方法がある。家族の歴史を土台に、その家族ならではの成長の方法がある。そんなことを、さりげなく教えてくれるのである。

 それぞれの家族が固有に持っている不思議な力を改めて思いながら、この映画を見終えた。

(by けい)

(参考文献)
「サマーウォーズ」細田守監督作品 DVD

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